
■時代と音楽が出会う
「<だれが祖国を二つにわけてしまったの>。この歌詞があの時代、どう受け止められたのか。朝鮮戦争と日本の戦後復興は裏表の関係にあったわけですからね。その複雑さの中でこの歌がどう歌われ、聞かれてきたのか。歌そのものが持つ歴史についても改めて考えさせられます」
学生運動の時代に生まれ、社会派フォークの象徴的存在として知られるURCだが、決して、イデオロギーありきの音楽ではなかった、と金平さんは言う。
「何かのために歌うのではない、どうにも止められないエネルギーが、生まれる瞬間があるんですね。ベルリンの壁が壊れ、ソ連が崩壊したとき、僕はちょうどモスクワにいたのですが、国がなくなる非常事態なのに、町には音楽が溢れていた。今までどこに隠れていたんだと思うようなアナーキーな音楽が、地下に封じ込められていたマグマが噴き出すかのように生まれていた。時代と音楽が、期せずして出会ってしまったとき、そういうことが起こるんですよ」
時を経ても色褪せない、平和を希求する歌の力がここにある。
「戦争と平和と銘打っているけれど、極めて内省的な、恋愛や苦悩の歌も、命の賛歌もあって。でもそれは確かにあの時代の空気、エネルギーを写し取ったもの。初めて出会う若い人にも、再び出会い直す人にも、今のこの時代だからこそきっと感じ取れるものがあると思います」
(ライター・岩崎眞美子)
※AERA 2023年7月17日号
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