これに合わせて供されたビールは「Kuro」。メニューには「日本のダークラガー。日本の料理に触発されて造った。スモークしたモルトとウマミたっぷりのコンブとのバランスがとれている」という説明書きが。同社が最初に製造販売をした3種のビールの一つで、看板商品だという。


 店員によると、オーナーであり醸造士のニック・サンデリーさんは「日本のビールが大好きで、日本に行っては各地で勉強を続けたそうです」。


 飲んでみると、イングランド、アイルランドのスタウトやポーターの重厚さはなく、日本の黒ビールもしくはハーフ&ハーフのような味わいだ。


 昆布出汁黒ビールを飲み、うどんをすすりながら、オーストラリアの日常生活に、いかに深く日本文化が浸透しているかを実感したのである。


 おそらくその背景には、日本を訪れた人が激増したことがあるだろう。オーストラリア経済はきわめて順調。1992年からコロナ禍前の2019年まで、28年連続でプラス成長を続けた。加えて円安もあり、92年に5万9844人だった訪日客数は、19年には62万1771人にも上った(日本政府観光局のデータから)。


 温泉の魅力にとりつかれ広大なスパを建設したチャールズ・ディヴィッドソンさん、ブリュワリーのサンデリーさんのように、訪日して触発された人々によって持ち込まれてきた日本文化。外国人を魅了してやまないのは、なにもアニメや漫画ばかりではないのだ。(ライター・菊地武顕)

AERA 2023年7月17日号より抜粋

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