近年、オーストラリアではじわじわと日本ブームが起きている。温泉、和牛、土釜でご飯を炊く……。そんななかにあって、国技であるオーストラリアンフットボール(フッティ)でプロ2年目の日系人が大活躍をし、彼の地のファンを熱狂させている。
「オーストラリア版ヌートバー」は、フッティの最高峰リーグAFLのセントキルダ・セインツでプレーする道人(=ミチト。通称ミッチ)・オーウェンズ。新人だった昨季は<7試合出場しただけだが、セインツの将来をになう本格的な選手として注目されるに十分な活躍だった>(セインツHPより)。その才能が開花し、今季は開幕からレギュラーに定着。193cmの体躯と卓越した身体能力で好プレーを連発し、近年低迷を続けていたチームはリーグ6位(全18チーム。7月12日現在)と堅実に白星を重ねている。
フッティは、ラグビーより一回り小さい楕円球を使用。1チーム18人で、キックとパスでボールを前に運び、相手ゴールに蹴り込む。ただしパスといっても投げることは禁じられている。ボールを拳で打つことで飛ばすのだ。
非常にユニークなルールゆえか他国での普及度は低いが、オーストラリアではまさに国民的競技。
オリンピック競技でもなければワールドカップもない。極端にドメスティックなフッティの魅力を、ミッチはこう語る。
「ラグビー、アメリカンフットボール、サッカーなどいろんな競技をミックスしたようなスポーツです。高い身体能力が必要ですし、防具をつけずに激突します。先日、私はタックルされて脳震盪を起こし、10分くらい立ち上がれませんでした。そういう激しいプレーも人気なんだと思います」
ミッチはまだ19歳にもかかわらず、沈着冷静なプレーぶりに定評がある。
「若い頃は技術と体力が大事だと思ってやっていました。でも今、プロのリーグでプレーしてみて、精神力が一番大事だと思っています。自分よりもずっとベテランの選手が、大きな試合で簡単なマーク(ボールをキャッチ)を落とす。それは全部、気持ちが不安定だからです」