完全失業者が56カ月連続で減少するなど、日本の雇用状況は改善しつつある。その一方で、働く意欲も能力もありながら仕事につく機会に恵まれない女性や高齢者、障害者がたくさんいるのも事実だ。彼らの社会進出がこれまで十分ではなかったのは、仕事と人との“ミスマッチ”が原因だったと言えるだろう。特に、中小企業の取り組みは遅れていると言わざるを得ない。
障害者の就業について言えば、2013年4月から民間企業の障害者雇用の「法定雇用率」が、従来の1.8%から2.0%に引き上げられた。さらに、2018年からは精神障害者の雇用も義務化される見込みであるという。しかし、全体として障害者の雇用状況は向上してはいるが、実雇用率は1.82%で法定の2.0%には届いていない。また、法定雇用率達成企業割合も44.7%にとどまっている(いずれも14年6月1日現在)。
そんな状況のなか、障害者の就労を支援する民間企業が続々と誕生している。いわば、障害者と企業、あるいは社会の間の橋渡し役である。これも時代の求めるところだろう。こうした企業による支援の上でも、ITが果たす役割が重視されているのだ。
13年に北海道で設立された就労移行支援事業所「ブリッジ」は、ITをメインに障害者の就労支援を行う施設だ。カリキュラムは独自性が非常に高く、通所者からも好評だという。
代表の加納崇行氏は、ブリッジの支援内容についてこう話す。
「まず、障害者一人一人の生活状況や通所方法、各個人の基本情報や就労に向けての意欲、現在の能力や今後身につけたいITスキルなどのヒアリングをする。その後、WEB制作やDTP制作、3D制作、イラスト・マンガ制作の4部門に分かれ、本格的なプログラミングやイラストレーターやフォトショップといったソフトの操作方法などを学んでもらう」
障害者に専門的なスキルを身につけさせて、就職に役立てようという考えだ。そして、加納氏は「IT 業界は多くの可能性を秘めている」と語り、こう続けた。
「今後、まだまだ伸びる業界ではあるが、人材不足が懸念されている。ということは、人材の需要があると認識しています。ブリッジでは制作会社も運営していることから、IT・制作業界の流れやトレンド、企業が求めている人材などを把握できます。そして、タイムリーに障害者に伝え、育てることができるのも強みだと思っております」
IT業界で、障害者雇用を促進させる先駆者となる「ブリッジ」。文字通り、障害者とIT企業の“懸け橋”となりそうだ。
(ライター・佐野泰人)