2023年グラミー賞授賞式に登場したマドンナ(写真:REX/アフロ)
2023年グラミー賞授賞式に登場したマドンナ(写真:REX/アフロ)
この記事の写真をすべて見る

作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、マドンナがマドンナであり続けることについて。

*   *  *

 東方神起が巻き起こした熱狂の渦に、自分ではどうしようもない激しい勢いで巻き込まれながら10年以上推し活を続けている。「組合員」と私が呼んでいるトンペン(←東方神起ファンのことです)仲間と語る夢は、いつかユノがつくるはずの老人ホームで世界中のトンペンたちと暮らしたい……である。勝手な妄想である。

 とはいえ正直なことを言えば、東方神起のライブとなれば、韓国、中国、タイにまで当たり前のようについていった頃(コロナ前)と比べれば、熱量は下がっているかもしれない。

 コロナ禍を通してジャニオタに転向したトンペンもいれば、すっかり足を洗った友人もいる。先日は、熱狂的だったユノペン(ユノのファン)に、「まだやってるの?」と驚かれたが、「なぜやめられるの?」と驚き返した私に彼女が言った一言が強烈だった。

「だって、もう、ユノ37歳だよ、おじさんじゃん」

 ちなみに彼女は50歳である。さっそく、「Aちゃん(彼女のこと)が、おかしくなった!」と他の組合員たちに言いつけたのだが、その時にみんなが言っていたことがさらに強烈だった。

「え~、いいのに~37歳。どんどん、ユノが私たちに近付いてきてくれてるね」

「そうそう、どんどんユノがこっち側に来てくれてるなんて、幸せ~」

 推し活とは、時の概念を歪めるものなのかもしれない。ユノと私たちの年齢差は常に一定だよ……という真実はどうでもいいのである。中年の域に入ろうとするユノに、「私たちに近付いてきてくれた」と考えるのが実に正しいファンの心理なのだ。ああ熱を冷ましている場合じゃないなと、私も熱いペン魂を復活させたのだった。

 ちょうどその会話をした日(東京ドームで東方神起のライブが行われた日)、75歳を迎えたジュリーのバースデーライブがさいたまスーパーアリーナで行われていた。日本中を熱狂させたセクシーなジュリーを50年以上見守っているファンがいる事実に胸が熱くなる。しみじみ私も見習いたい。

次のページ
「変わりよう」と「変わらなさ」