工学は、理系の中でもとくに女性が少ない。私がコンピューターの勉強をしようと進学した東大工学部計数工学科では、100人中女子は私1人。大学院に進んだら、計数工学専門課程ができて以来2人目の女性だった。それで、なるべく女性っぽくないようにというか、周りに合わせて女性を消すようにした。高校まではそうじゃなかったですけど、大学に入ってからはずーっと女性であることを消してきた。企業に入ってからもそうです。研究活動はずっとそういう状態で、研究に対する価値観とかいろんなことでなんか違和感があった。

 それが、日本感性工学会の先生と出会ってから変わった。横断型基幹科学技術研究団体連合、略して横幹連合ってご存じですか?

――いえ、知りません。

 20年前にできた団体で、先日、20周年の記念式典が開かれました。タテに細分化されている科学技術に対して、「横」の軸が重要だということで40ぐらいの学会が集まってつくった組織で、初代会長は元東大総長の吉川弘之先生です。私は準備会合のときから参加して、縁の下の力持ちとしてすごくがんばった。「横幹連合の母」って言ってもいいと自分では思っているぐらいです。

 その準備会合のとき、感性工学会の男性の先生が「21世紀は女性の世紀だ。これからは経済的な価値観ではなく感性的な価値観で世の中は動いていくんだ。女性はそういう意味で時代を先取りしている」というようなことを言われた。それがピーンと来たんですね。私の価値観って時代を先取りしていたのかな、って。私が価値だと思うのに、みんなが思ってくれないのは、私が女性だからで、将来はみんなが同じように思ってくれるかもしれないと希望を持った。

「kawaii」を世界に発信しているアソビシステム本社の増田セバスチャン氏の部屋で=2013年、大倉典子さん提供
「kawaii」を世界に発信しているアソビシステム本社の増田セバスチャン氏の部屋で=2013年、大倉典子さん提供

 学会に入ったら、男女を問わず同じような価値観の人が多くいました。「感性こそ価値」みたいなね。それで肌に合ったんです。横幹連合も、いろんな知恵を結集して社会的課題を解決しないといけないというのが基本的な考え方で、今でいう「総合知」です。純粋に一つのことをやっていくのが研究者として偉い人、という従来の日本の価値観とは全然違う。だから、こちらもすごく肌に合った。なんか、急に私に未来が見えてきた。

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