今西憲之
横浜市鶴見区のマンション敷地内で6月29日午前、住人の大学1年生、冨永紗菜さん（18）が刺殺された事件で、元交際相手の伊藤流稀容疑者（22）が殺人容疑で逮捕された。冨永さんは伊藤容疑者の暴力や束縛に苦しみ、警察に4度相談し、友人にもSOSを発信していた。だが、犯行は防げなかった。
冨永さんの友人がこう話す。
「（冨永さんは）伊藤容疑者は束縛がきつく、すぐに手を出す、何をされるかわからないと言っていた。それが嫌で何度もトラブルになって、とても怖がっていた。別れたにもかかわらず、付きまとわれて困っていた」
少なくとも、紗菜さんはこれまで4度、警察に相談していたという。
最初の通報は2021年10月で、伊藤容疑者の暴力などを見かねて、友人が通報したという。
2回目は、昨年6月、
「伊藤容疑者が冨永さんのSNSに『俺の写真をなぜ載せない』『ツーショットの写真を撮っただろ」などと迫って、殴ったり、けったりと暴行に及んだので警察に通報した。この時は仲直りしたので、そう大ごとにはならなかったと聞いた」（前出の友人）
3回目は昨年12月で、冨永さん宅の周辺住民から、
「けんかしているような騒ぎ」
「悲鳴が聞こえる」
と110番通報があり、警察官が駆け付けたという。
また、伊藤容疑者の自宅でも2人が何度もケンカになって、通報されたこともあったという。
通報を受け、警察では伊藤容疑者と冨永さん双方の家族などと連絡をとり、トラブルにならないようにと話し合いの場をもった。伊藤容疑者も納得した様子を見せたという。
そして、事件の1週間前、6月22日に4度目の110番があった。
冨永さんと伊藤容疑者は、伊藤容疑者の車の中でトラブルになり、もみあいになった。冨永さんが通報して、警察官が駆け付けた。冨永さんは、
「このままなら殺される」
「よりを戻さないと殺すと言われた。馬乗りで殴られたこともある」
「顔を平手で何度もビンタされた」
「もう（伊藤容疑者）嫌だ。二度と会いたくない」
などと伊藤容疑者の暴行を訴えたという。
今西憲之
大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は３０年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。
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