最初に発売された6種のトミカのなかで、特にボクの目をくぎ付けにしたのは、トヨタクラウンだった。トリノの自動車ショーでみた白いクラウンの精密なモデルが、そこにあったからだ。
ところが、発売時に数台のトミカを手にしていたボク自身が、中学進学と同時にミニカーコレクション暗黒時代を迎えてしまった。カメラやギターなど、あちこちに興味が広がって、ミニカーコレクションが極端にペースダウンしてしまったのだ。
そんなボクのミニカーコレクションに再び火が付いたのは、大学進学がきっかけだった。同級生にトミカコレクターがいて、盛り上がってしまったのだ。トミカの発売から6年が経っていて、すでに絶版品が出ていた。
そこで、トラックドライバーをしていた友人と古い玩具店でトミカの在庫を探す旅を毎週繰り返す生活が始まった。結果的に、この旅でトミカのバリエーションは、すべて定価で揃えることができた。まさにギリギリのタイミングだったと思う。ただ、この旅でたった一つだけ集まらなかったバリエーションが、赤色のトヨタ2000GTだった。ただ、それはボクがトミカ発売時に購入したわずか数台のなかの一台だった。
それから52年が経過し、ボクのトミカコレクションは、 1万5000台に膨れ上がった。もちろん未入手のモデルはあるが、主要なバリエーションは揃っている。多くのコレクターに見てもらおうと、トミカコレクションは、すべてボクの博物館に展示している。
森永卓郎(もりなが・たくろう)/1957 年7月12日、東京都生まれ。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。東京大学経済学部卒業。日本専売公社、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職