昨年6月にデビュー30周年記念ツアーがスタートした大黒摩季。5月28日にファイナル公演を無事に終了した彼女が、波乱に満ちた30年の歩みを振り返った。AERA 2023年7月3日号の記事を紹介する。
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―東京ガーデンシアターで行われたツアーファイナル公演は、30周年のフィナーレに相応しい熱狂に包まれた。
大黒摩季(以下、大黒):今回が最後のツアーになるかもしれないと思っていたので、挑めるだけ挑んでおこうと思っていました。ツアー中は心配されると思って言わなかったんですが、頸椎が変形していて声帯に麻痺が出てくるんです。いつまでツアーができるかわからない。最近よく「生きてるだけで丸儲け」って言ってるんですが、歌えるだけで幸せです。
■休業以降は「三重苦」
―凄まじい熱量で聴く者を圧倒した大黒さん。実は20代後半から様々な婦人科系の疾患を患ってきた。その治療と並行して不妊治療も続けてきた彼女の体は限界に達し、2010年ついに無期限の活動休止を発表。約6年休業した。
大黒:病気になるまでは何をやっても満たされないみたいな思いがありました。ある意味、良くも悪くも強欲に生きてきたから。でも、病気になって初めて、頑張ってもどうにもならないことがあることを知りました。いろんなものを失くすと、小さなことを喜べます。
休業以降は、自分の病気、離婚、母の介護と全てが重なって、まるで三重苦。私も病気がありながら母を北海道から呼び寄せたのは、大変なことはいっしょくたにまとめてしまえばいいかって思ったから。でも、何より母の面倒をずっと看てくれていた弟を幸せにしたかった。弟にとって母は拠り所だったみたいですが、母を預けっぱなしでは彼の家庭が壊れると思った。姉弟の縁を切るくらいのことを言われましたが、幸せになれば弟もいずれ気づくと考えました。
―だが、介護は思っていた以上に大変だった。