そして、アメリカの文化というものが戦争を好む文化になってきています。それだけではなく、アメリカ人はヒーローでもなんでもなくて、確かに高い技術力を持ってはいるんですけれども、戦争をする対象というのは常に自分よりも何十倍も弱い相手に対して戦争するわけです。そこが一つの特徴で、たとえばドイツなどと比べると、そういった点はかなり異なるのではないか、というふうに思います。

 アメリカフォビアという話をしましたけれども、これはアメリカのシステムに対しての話です。

 もちろん、アメリカの個人、アメリカ人は個人的にはひじょうにいい人がたくさんいます。もちろん、文化的にもフランス人に近いところがあるので、お互いやりやすいという側面はあります。

 ただ、それがシステムになると、ひじょうに危険なものになるということなんですね。もしかしたら、それは人口規模にもよるものなのかもしれないというふうに思います。

 たとえば、フランスなども、もしアメリカのように3億人を超えるような人口を抱えていれば、こういった傲慢な態度に出ることもあり得るのかもしれないわけで、人口規模というのもここでは重要になってくると思います。

 まだまだフランスはひじょうに小さいです。アメリカに比べると小さいですけれども、それでも世界に対していろいろと説教をしようとする国なので、これがあのアメリカと同じような大きな国になれば、同じような傲慢な態度になるかもしれないと思いますね。

●エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd)
歴史人口学者・家族人類学者。1951年、フランス生まれ。家族構成や人口動態などのデータで社会を分析し、ソ連崩壊などを予見。主な著書に『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』(文芸春秋)『第三次世界大戦はもう始まっている』(文春新書)など

●池上 彰(いけがみ・あきら)
ジャーナリスト。1950年、長野県生まれ。NHKの記者やキャスターを経て、フリーに。名城大学教授、東京工業大学特命教授。主な著書に『世界史を変えたスパイたち』(日経BP)『第三次世界大戦 日本はこうなる』(SB新書)など

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エマニュエル・トッド

エマニュエル・トッド

エマニュエル・トッド(Emmanuel Todd) 歴史家、文化人類学者、人口学者。1951年フランス生まれ。家族制度や識字率、出生率に基づき現代政治や社会を分析し、ソ連崩壊、米国の金融危機、アラブの春、英国EU離脱などを予言。主な著書に『グローバリズム以後』(朝日新書)、『帝国以後』『経済幻想』(藤原書店)、『我々はどこから来て、今どこにいるのか?』『第三次世界大戦はもう始まっている』(文藝春秋)など。

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