『人生の道しるべになる 座右の寓話 (ディスカヴァー携書)』戸田 智弘 ディスカヴァー・トゥエンティワン
『人生の道しるべになる 座右の寓話 (ディスカヴァー携書)』戸田 智弘 ディスカヴァー・トゥエンティワン
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 2022年に発売された『ものの見方が変わる 座右の寓話』は、古今東西語り継がれてきた77の寓話とその解説を掲載し、13万部を突破するヒットに。それがさらなるパワーアップを遂げ、最新刊『人生の道しるべになる 座右の寓話』として登場しました。今回もイソップ童話や中国古典、偉人の逸話、思考実験など77の寓話と、著者・戸田智弘氏の読み(解説文)を紹介。そこから「わかりやすい教訓」と「人生の深い知恵」が読み取れるようになっています。

 新作に一貫しているテーマは「道しるべ」。「人生は後戻りできない旅である。私たちの誰もが『初めての人生』を歩んでいる」(同書より)ことから、寓話が私たちの生きる道しるべになると記しています。

 たとえばここで、誰もがよく知る「ウサギとカメ」の話を見てみましょう。幼い頃に読んだイソップ童話から、「強者であってもそれに甘んじて油断していると、弱者と侮っていた相手に負けてしまうことがある」、つまり「油断大敵」という教訓を得た人は多いはず。けれど、同書にはなんと別バージョンの「ウサギとカメ」も掲載されています。それはカメが「普通に戦ったのでは勝てない」と状況判断し、ある奇策を立てるというアフリカの寓話です。著者は両方のお話を紹介し、「寓話というのは、話によって相矛盾する正反対の教訓が説かれていることに注意したい」「寓話が提供するのは、さまざまな具体的状況の中で自分がどう行動したらいいのかを示す処方箋だからである」(同書より)と解説。いつどんな状況でも両方の可能性を頭に入れながら適切なほうを選択するのがよい、としています。......これ、目からウロコの「ウサギとカメ」の解釈ではないでしょうか。

 同書では初めて知る寓話もあれば、「花咲かじいさん」「山月記」「幸運なハンス」のようによく知られた寓話もあり、バラエティに富んでいます。また「寿命と『時間の使い方』」「幸せになるための考え方」「人生観と死生観」など15の章から成り立っており、興味を持った章や話から読むのも自由です。ただし著者によると、第1~3章は概論、第4~13章は「人間の心の発達」について、第14・15章は「人類の課題」というテーマに分かれているそうなので、念頭に置いておくとよいかもしれません。

 私たちが生まれるはるか昔から語り継がれてきた寓話には、たくさんの貴重な教えが凝縮されています。それは私たちがつらく感じるとき、迷ったときの道しるべになってくれることでしょう。ただし、その読み解き方がわからないと自分の血や肉にすることはできません。同書でその解釈にふれてみてはいかがでしょうか。自身の人生や仕事、人間関係などについての考えを深めるのはもちろん、職場のスピーチやプレゼンなどのネタにも役立つでしょう。

[文・鷺ノ宮やよい]