岩波新書で『女の一生』というタイトルときたら、モーパッサンか森本薫(劇作家)かと思うところですが、これは伊藤比呂美による「人生相談」の本。
 伊藤比呂美は詩人で、小説や随筆も書く。そして人生相談もやっている。物書きの人生相談ってのは、タメになることを答える、ことよりも「よりおもしろい(=思いがけない)回答」を期待されるような気がするが、伊藤比呂美の人生相談は「タメになることを思いがけない言葉で言う」ものだ。昔からこの人の回答は「みもふたもな」かった。その「みもふたもなさ」というのは、この人が若い頃に書いていた詩に「おまんこ」が頻出したのと同じような、読者に対して過剰な自意識をビシャッと叩きつけてくる感じ。時には気持ちがいいが、時にはカチンとくる。ま、それも含めて楽しむのが伊藤比呂美の人生相談。
 たとえば「更年期障害のホットフラッシュがつらい」という相談には「アメリカの甘くないスイカを食いまくってしのいだ」という回答で、これなんか私にはカチンとくる。ねえんだよ、ここにはアメリカのスイカは! と言いたくなる。まあ相談もたいして切迫もしていないだろうが。でも更年期うつにはホルモン療法が劇的に効くという役立ち情報も書いてある。
 他に、白髪を染めたほうがいいかという問いに対して「(更年期の女性は髪を短くする、それはパーマをやめて白髪染めを優先するからだと言われるが)長い髪の毛は、女でした」「それを、今、切り捨てる」「それまで離れられずにきた女らしさを、月経とともに、捨てる」と、こうだ。なまぐさい詩のリングに引き出された気分になってしまう。
 大学生ぐらいの頃、伊藤比呂美を読んで大いに影響を受けたものだが、今は食傷している。でもつい読んじゃう中毒性があり、そしてよく読めば悪いことは言っていない。カチンカチンきながら、たぶん死ぬまで読み続けることだろう、伊藤比呂美。

週刊朝日 2014年10月31日号

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