エルヴィス・コステロ 最新インタビュー~ニューAL『ルック・ナウ』や闘病について語る
エルヴィス・コステロ 最新インタビュー~ニューAL『ルック・ナウ』や闘病について語る
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 2018年10月12日にジ・インポスターズとのニュー・アルバム『ルック・ナウ』をリリースするエルヴィス・コステロが米ビルボードとのインタビューに応じ、最新作がリリースされるまでの紆余曲折、収録曲の背景、そして自身の健康問題などについて語った。

 今年の6月から7月にかけて癌治療のためツアーをキャンセルした64歳のコステロだが、インタビューのためにマンハッタンのザ・レッドベリー・ニューヨーク・ホテルに現れた彼はピンストライプ・スーツを颯爽と着こなし、すっかり活力とウィットを取り戻した様子だった。

◎癌の手術は成功したとお聞きしていますが、あなたの健康に関する報道が収拾がつかなくなってしまったとコメントされてますね。

 僕がまるで命懸けの戦いでもしているかのように英国のタブロイド紙が報じてたからね。この件については自分では公にするつもりはなかったんだよ、91歳の母や11歳の双子の息子たちを心配させたくなかったから。ようやく最近英国に行く機会があって事実を伝えることができた。「元気だよ」と言えたのは比較的嬉しいことだったよ、ありがたいことに。それと、会ったことない人たちからメッセージが寄せられているのは最高だね。みんなが気にかけてくれていると分かってものすごく嬉しい。

◎ニュー・アルバムに関しては、レコーディングが始まる直前に、当初リリース予定だったレーベルと決裂してしまいましたよね。何があったのですか?

 社内の現場レベルの人たちは僕のレコードのために尽力してくれていたけれど、どうやら上層部が別の算段をしたんじゃないかと思う。鉄道会社や下水(処理)会社を所有している人に応じるような人たちだからさ、結局は商品ビジネスだからレコードの内容なんてどうでもいいと思ってるんだよ。これは自虐的な意味で言ってるんじゃない、だって才能に溢れてる若いミュージシャンの友人たちがいるけど、彼らを支援する仕組みがないのは間違いないから。

◎『ルック・ナウ』の1曲目「アンダー・ライム/Under Lime」には、2010年の『ナショナル・ランソム』に収録されている「ジミー・スタンディング・イン・ザ・レイン」に登場するキャラクターが出てきます。あのキャラクターを再び描きたいと思ったのですか?それとも曲を書いている段階で、「あ、これは続編のようなものになるかもしれない」と気付いたのですか?

 特定のキャラクター・ソングの続編を2曲以上作るアイデアがあったけれど、結果的にこのレコードのために検討していた曲の多くが別人の視点から書かれていたんだ。このちょっとしたみすぼらしい物語がこのアルバムの序文にいいんじゃないかと思ったのは、アルバムの(他の曲に登場する)人々がもっと柔軟で立派だったからだ。(90年代後半に)キャロル・キングと書いた「バーント・シュガー・イズ・ソー・ビター」に登場する女性は、何かを信じようとしている。近所の人たちや元夫や子どもたちの意見など、彼女が何もかもこなそうとしながら、また誰かを信頼できるようになって恋する方法を探す姿を描いているんだ。

◎ありふれた悲劇を描いている曲が多い印象です。

 前例のないようなものではない。そうしたくなかったんだ。胸に響いて欲しかっただけ。「ストリッピング・ペーパー」は結婚生活の崩壊を変わった方法で物語っている。壁紙を剥がしている女性が、下の壁に娘の身長を測って線を引いたこととか、もしかするともっと前の、幸せだった頃の夫とのエロチックな記憶が蘇って、自分の人生を振り返っている。実際に経験したことがなくても、何らかの感情を抱けるようなことで、僕が意図していたのはそれだけなんだ。これらの楽曲には感情とか、優しさとか表現力を込めたかった。バンドは非の打ちどころがなかったし、(このアルバムで)演奏してくれた全てのプレイヤーたちもそうだった。

◎「アイ・レット・ザ・サン・ゴー・ダウン」は帝国の消滅を憂いている英国民を同情的な眼差しで描いていますね。

 自分と意見が違う人々に共感するんだ。彼らが何故それほど情熱を持てるのか理解しようとする。僕は敬礼しない。する義務もないからしない。あの曲のポイントは、僕は(敬礼を)する人(の意思)に配慮する、でも正当な理由があってしない人に対して、その権利がないとか言うなってことなんだ。

◎あなたはとても多作で、1回限りの楽曲もたくさんあります。過去曲をおさらいしていたところ、忘れてしまっていた珠玉の1曲と再会しました。ザ・チーフタンズのパディ・モローニとの「ロング・ジャーニー・ホーム(アンセム)」で、米国のアイルランド移民を描いた1998年のミニシリーズのためのものでした。

 あれは美しい曲だよね。あの曲はとても誇りに思っている。あれはいわば米国のアイルランド人のアンセムみたいなものだ。聖パトリック祭にカーネギー・ホールで大きな合唱団と演ったことがあった。とても感動的だった。でもあれだって誠実な曲だ。あのメロディは美しい古来のメロディをパディが変化させたものだ。“だがハシゴを登る時、自分が歩いた道を見下ろすんだ”(という歌詞)は世代から世代へと受け継がれる移民体験だ。不幸にも、歴史的に、人々は新たな生活を求め、アイルランド人の場合は生き延びる術を求めて(米国に)やってきて、前の世代の手を踏みつけてハシゴを登った。そこに以前からいた人々も(踏みつけた)。それが人間の本質と歴史の一部だ。どの文化にも情深い人はいるし、悪人もいる。それほど単純じゃない。でもあれは誠実な曲だった。

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