会社員の女性が1月、ストーカーの男に刺されて亡くなったJR博多駅近くの現場。今も花や飲み物などが手向けられている
会社員の女性が1月、ストーカーの男に刺されて亡くなったJR博多駅近くの現場。今も花や飲み物などが手向けられている
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 ストーカー規制法は3回の改正で規制対象が広がってきたが、凶悪な事件が繰り返されている。要因として、関係者はSNSの浸透を指摘する。AERA 2023年3月20日号の記事を紹介する。

【グラフ】全国の警察へのストーカー相談の推移

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 なぜ、ストーカーは減らないのか。

 福岡市博多区のJR博多駅近くの路上で1月16日、会社員の女性(当時38)が元交際相手の男(31)に刃物で刺され死亡した。男はストーカー規制法に基づき、再び行為を繰り返せば刑事罰にもつながる「禁止命令」を受けていた。

 さらに、先月20日に知人女性が住むマンションに侵入した疑いで逮捕されたNHKアナウンサーの男(47)にも、逮捕後にストーカー規制法の禁止命令が出されたことがわかった。男の女性に対するストーカー行為が悪質なものであり、緊急性があると判断されたという。男が釈放後、女性に対するストーカー行為を繰り返せば、再び逮捕される可能性がある。

 ストーカー規制法は2000年、前年に埼玉県桶川市で起きた桶川ストーカー事件を受け施行された。「つきまとい行為等」に警告や禁止命令を出すことができ、違反すれば逮捕できるようになった。

 その後、新たな手口が増えるたびに規制対象は広がった。これまで3回にわたり改正され、今ではSNSへの執拗(しつよう)な書き込みや、GPS機器などを使い相手の位置情報を無断で取得する行為も規制対象に加えられている。それでも、被害の相談は絶えず、事件は繰り返される。

 全国の警察が受けたストーカー相談は近年、2万件前後で高止まり状態が続く。そして、殺人に至るような凶悪な事件も後を絶たない。

AERA 2023年3月20日号より
AERA 2023年3月20日号より

 20年以上、ストーカー被害者支援や加害者のカウンセリングに取り組むNPO法人「ヒューマニティ」(東京都)理事長の小早川明子さんは、ストーカーが減らないのはSNSの普及が最大の要因と見る。

「以前は交際や恋愛感情のもつれから起きることがほとんどでした。それが、SNSの浸透によって対象を見つけやすくなった。そして相手を身近な存在と思い込む。つきまとうインフラが整い、匿名性の気安さから残酷なこともできる。気が付いたら対象と行為にハマっている」

 小早川さん自身、仕事をめぐり執拗なストーカー行為を受けた。「お前は俺を傷つけた」と言われ、謝罪しても離れてくれなかった。その時の心境をこう語る。

「ひたすら困惑し、おびえ、脱出の活路を見いだそうと考え続けました」

(編集部・野村昌二)

AERA 2023年3月20日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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