イエスの死から叙任権闘争、十字軍、ナチスとの接近までキリスト教の歴史を時系列に追う。これまでのキリスト教史との違いは、タイトルからわかるように小説『仁義なき戦い』をモチーフにしている点。登場人物が全員広島弁というかつてない壮大な試みに挑んでいる。
「穴掘っとけい、ぶち殺しちゃらあ!」 「ユダ、おどれがチンコロしおったんか!」
 会話だけでなくシノギやら落とし前やら物騒な言葉も並ぶので穏やかでない。やくざとキリストとは全く関係がないのではと指摘を受けそうだが、キリスト教の陰の歴史は俗にまみれた権力争いの歴史でもある。内部の宗派争いはまさに「抗争」であり、魔女狩りや十字軍は残忍だ。キリスト教をやくざの歴史に見立てるのも決して飛躍したものではないと著者は語る。
 創作も一部交えているが、史実に沿って展開する。「やくざ」が広島弁でひたすらまくし立てる迫力に後ずさりしてしまう感はあるが、日本人がキリスト教を知る入門書としてはこのような本もありでは。

週刊朝日 2014年4月18日号