『ローザ・ルクセンブルグ コンプリート・コレクション』ローザ・ルクセンブルグ
『ローザ・ルクセンブルグ コンプリート・コレクション』ローザ・ルクセンブルグ
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 3ヶ月ぐらい前だったか。ローザ・ルクセンブルグのボックス発売と、それにまつわる話をとりとめもなくさせてもらった。ただ、その時点ではスペックを含めた情報量があまりにも乏しく、書いているぼくでさえもリリース自体のランディングをちょっとばかり疑っていたのだが、1度の延期を経てついに先月、『ローザ・ルクセンブルグ・コンプリート・コレクション』(6枚組)が届いた。というわけで、その雑感を少しばかり。

 日本のロック・シーンにとんでもないインパクトを与えた男、どんと率いる稀代のゴッタ煮バンド、ボ・ガンボス。その前身バンドとなるのがこのローザ・ルクセンブルグであり…というサワリをここでも何となしに用意していたのだが、いや待てよと。今回、彼らの作品をじっくり聴き込み返しているうちに、「どんと=ボ・ガンボス=ローザ・ルクセンブルグ」という公式がほぼ成立しないんじゃないだろうかという気分になってきたのだ。あれ、おかしいな、中学時分に死ぬほど聴いたのになぁ。とまれ、こういう評価の見直しはよくあることで、別に過去の心持ちと辻褄を合わせる必要なんてまったくないのだけれど。

 結論から言えば、このローザ・ルクセンブルグ、ギターの玉城宏志、ドラムの三原重夫の存在がとてつもなく大きい。当たり前だが、決してどんとのワンマン・バンドでなない。

 玉城のバカテク・ギター・カッティングやハード・ロッキンなソロ、三原のひっそりと遂行されるアクロバテイックなドラム・パターンこそが、間違いなくローザの特異なる音楽の根幹を成していたことをこの期に及んで気付いてしまったのだ。
どんとの奇矯で愉快な歌~たたずまいにばかり夢中になって、そのことに気付かなかった、または軽視していた僕の昼あんどんリスナーぶり、これは熱心なローザ信者から激しく糾弾されるべきものだろう。すごく反省している。

 とりわけ、グループの“龍虎”、どんとと玉城の個性がこぜり合いのように拮抗した2作目の『ROSA LUXEMBURG II』、ここにローザ・ルクセンブルグというバンドの本質をハッキリとみた。ほとんどボ・ガンボス、ほとんどボ・ガンボスとは異質。ハッキリ分かれたふたつの世界がタスキがけのように入り乱れている。概ね玉城と三原は、ブルース・ロックやニューウェイヴ要素の機能化に尽力した、と一方的にタスクを分けてしまうのはぞんざい極まるが、それでもレッド・ツェッペリン、ディープ・パープルのギター・リフをバンドに持ち込んだのはもちろん玉城の仕業。トーキング・ヘッズのクリス・フランツのようなツイストした律動をつかさどるのは三原の所為。もはや「ボ・ガンボスの前身バンド」とは軽々しく呼べない両者の怨念めいた自己主張がほとばしっている。ある種辟易しそうな緊張感をもたらした彼らの存在を抜きにしてローザを語るのはありえないということだ。これは付属のライヴDVDを観てもらえればなお明らかだろう。

 さらに俯瞰して、誤解を恐れずに言うならば、「どんと(=ボ・ガンボス)の世界なんざ知るか、いてもうたれ!」という具合に噛みついた玉城こそ、真にローザ・サウンドの立役者であったのかもしれない。

 ちなみにブックレットには、現在の玉城、三原が個々に当時を振り返っているインタビューがライナー代わりに掲載されている。ファンにとっては、驚愕の新証言、あるいは色々な想いを馳せることができる感動のコンテンツに違いない。あぁ今年は、ローザの盛夏になりそうだ。[次回8/21(水)更新予定]