「これがSF?」



そんな声もあがった、新鋭SF作家・宮内悠介氏の『盤上の夜』。同作の題材となったのは、なんと囲碁。第1回創元SF短編賞で選考委員特別賞を受賞すると、様々な盤上ゲームをテーマにした作品を書き、連作短編集『盤上の夜』を刊行。同作は、第147回直木賞候補作にもなりました。



1979年生まれの宮内氏は、1992年までニューヨークに住んでおり、早稲田大学第一文学部英文科を卒業。在学中はワセダミステリクラブに所属しており、SF作家になる以前はミステリ畑にいたようです。卒業後は、インド、アフガニスタンを海外放浪。帰国後には、麻雀プロ試験を受験し、補欠合格。その後、プログラマーになった異色の経歴を持つ作家です。



囲碁をはじめとするゲームのなかにSFとの接点を見出した宮内氏が、第2短篇集『ヨハネスブルグの天使たち』で、テーマとしたのがロボット。9.11の現場からアフガニスタンまで、世界5都市にて、日本製の機械人形の存在を通し、人の業と本質を抉り出し、国家・民族・宗教・戦争・言語の意味を問い直す連作5篇となっています。



今回、第149回直木賞候補作に選出された同作。二作連続直木賞候補は、SF界では非常に珍しいこと。最近では、円城塔氏が『道化師の蝶』で芥川賞を、高野史緒氏が『カラマーゾフの妹』で江戸川乱歩賞を受賞するなど、SFの世界が一般的に馴染み深いものになってきています。



宮内氏の直木賞初受賞となるか。発表は7月17日(水)です。