「コンビニ百里の道をゆく」は、53歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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刺激的な体験で、まだ余韻が続いています。政治家、企業のトップなどが一堂に会し、世界の諸課題について議論する世界経済フォーラム年次総会「ダボス会議」が1月にスイスで開催され、私も4度目の参加をしてきました。
3年ぶりに行って、まず驚いたのは、欧州でのマスクをしている人の少なさでした。日本でも13日からマスクの着脱は個人の判断になりますが、ダボスに向かう飛行機内では、誰一人マスクをしている人を見ませんでした。ダボス会議の会場でもマスクをしているのはほぼ私だけ(笑)。座席のディスタンスもなく、はてさて、私は日本から「コロナ前の過去に戻ったのか、未来に来たのか」。非常に考えさせられました。
肌で感じたのは中東・アジア系の国々の勢いです。ダボス会議は各国の政財官の人たちに自国をアピールする場でもあります。例えばサウジアラビアなどは「サウジハウス」を設けて積極的。中でも際立っていたのがインドです。自動車の国内新車販売台数で日本を抜いて世界3位になり、人口でも中国を抜いて世界1位(推計値)。ますます成長していきそうな、雰囲気を感じました。インドは州ごとにルールや法制度が異なり、私たちローソンもなかなか進出できていない国。今後はやはりこの国と向き合っていかねばという思いを強くしました。
先進的なテーマとして「ジェネレーティブAI」についても活発な議論が交わされました。これまでのAIは前提として大量のデータがあり、それを学習して予測を立てたりしますが、ジェネレーティブAIは自分で仮説を立て、考えていく。ローソンでもたとえば発注システムではそれまでの販売・購買データをAIに読み込ませて精度を上げているのですが、今後もさらなる挑戦をしていかないと世界に遅れてしまうなと、身の引き締まる思いでした。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2023年3月13日号