試合を決める劇的な本塁打を放った選手が、“カニ歩き”しながらホームインする珍風景が見られたのが、18年の茨城大会2回戦、石岡一vs竜ヶ崎一だ。

 7回に1点を先制した石岡一は、1対0の8回にも無死一塁のチャンスをつくり、主将の1番・河嶋駿太郎に打席が回ってきた。

 ここはどうしても追加点が欲しい場面だったが、河嶋は3回から足が痙攣して走れなくなっていた。川井政平監督からも「この打席が終わったら、交代させる」と告げられていた。

 これまで3打数無安打だった河嶋は、最後の打席で主将の意地を見せようと「走れないので、ホームランを狙いました」と気合を込めて執念のひと振り。快音を発した打球は、見事値千金の2ランとなって、右翼席に突き刺さった。

 両足を吊った状態にもかかわらず、歩きながらダイヤモンドを1周しようとした河嶋だったが、三塁ベースに達したところで、ついに限界となり、ベース上で小休止。ひと息入れたあと、今度はカニのようにゆっくり横歩きしながら、やっとの思いで、3点目のホームを踏んだ。

 生還後は「メッチャ恥ずかしかった」と照れることしきりの河嶋だったが、チームメイトたちに抱きかかえられ、ヒーローになった喜びを全身で体感していた。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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