山手線・渋谷駅の駅のホーム(画像はイメージ。本文の内容とは関係ありません)
山手線・渋谷駅の駅のホーム(画像はイメージ。本文の内容とは関係ありません)

東京のJR山手線・渋谷駅で、「線路に財布を落とした」という理由で列車の非常停止ボタンを押した若い男性に対し、駅員が激高する様子を撮った動画が拡散された。これに対して、双方の対応とも議論を呼んでいるが、そもそも、財布を落としたなどの理由で非常停止ボタンを押し、列車を遅延させる行為に法的問題はないのか。専門家に聞いた。

【アンケート】公共交通機関のマナー「許せない行為」1位は?

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「なんだその態度は、山手線止めてんだぞ!」(駅員)

「しょうがないじゃないですか、お金落ちちゃったんですから」「4万円も財布から出てたんですよ」(若い男性)

 動画に映っているのは、非常停止ボタンを押したことに激高する駅員と、「財布が落ちたから」とごねる男性。

 JR東日本によると、この動画の事案が発生したのは4日午後8時ごろ。渋谷駅のホームで、線路をのぞきこんだり、線路に降りるしぐさをしている男性を駅員が発見。数人の駅員が駆けつけて制止し、男性とともにホーム上の安全な場所に移動した。男性が、線路に財布を落としたと説明したため、駅員は「これから拾います。準備をするのでお待ちください」との趣旨を男性に説明したという。

 しかし、男性は納得しない様子で、駅員の準備を待たずにホーム上の非情停止ボタンを押した。この際、駅員と男性がもみ合いとなり、駅員は警察に通報したという。

 結果、山手線外回りの列車に約2分の遅れが生じた。

 JR東によると、非常停止ボタンを押して良いのは人命にかかわるケースや、線路上に重い荷物が落ちたり、小さなものでもレールの上に乗ってしまったなど、運行に支障をきたしかねない場合だという。今回については、「駅員がそばにいて財布を拾う準備をすると伝えているため、緊急事態には当たらない」(JR東)という。

 JR東は駅員の対応について、「安全を守らなければならないという使命感から、強い口調になってしまった」と説明。線路上の財布は拾って男性に渡したという。

 双方の対応に賛否両論の声が出ているが、そもそも、こうした理由で非常停止ボタンを押し、列車を遅らせる行為に法的問題はないのか。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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