
歯みがきの後に、歯ぐきから血が出ることが増えた。巷(ちまた)では、歯周病のサインといわれているし、歯医者に行ったほうがいいことはわかっている。でも忙しくてすぐには行けない。このような場合に、悪化させない方法はあるのでしょうか? また、受診せずにどのくらいまでもたせられるものなのでしょうか? 歯周病専門医の若林健史歯科医師に聞いてみました。
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歯をみがいたときに歯ぐきから出血が起こる場合は、歯周病と考えて間違いないでしょう。健康な歯ぐきは歯ブラシでかなり強くこすっても、簡単には出血しません。
歯周病になっている歯ぐきは炎症を起こして腫(は)れています。歯周病菌が増殖している場所には、病原菌を排除しようと免疫細胞の白血球を含む血液がたくさん送り込まれるので、歯ぐきの血管に圧がかかって薄くなり、ちょっとした刺激で破れやすくなっているのです。

出血以外にも、歯ぐきが腫れてぶよぶよしていたり、痛みや膿(うみ)の症状があったり、口臭がひどい、歯がぐらぐらしているなどの場合は、かなり進行している歯周病と考えられます。歯を抜かなければならないか、残せるかの瀬戸際になっていることもあるので、1~2週間以内には歯医者に行ってほしいですね。
こうした症状がなく、「出血だけ」ということであれば、歯周病はそれほど進んでいない可能性が高いです。診断がされていない前提ですので、確実なことは言えませんが、セルフケアを徹底すれば、2~3カ月は進行を食い止めることができると思います。
なお、私のこれまでの診療経験では、普段から歯科に行く習慣がある人が出血した場合、歯周病になっているのは、「たまたまみがけていなかった一部の歯のまわりのみ」ということが多いのですが、そうでない人の場合、「歯ぐき全体が歯周病になっている」ことが多いです。
歯ぐきから出血があるということは、周囲の歯にみがき残しがあるということです。歯周病菌は食事で付着した食べカスに集まり、そこで増殖して、細菌の塊であるプラーク(歯垢、しこう)を作ります。これが歯周病を発症させる一番の原因です。まずは、みがき残しがないように、ブラッシングのやり方を変える必要があります。