たとえば赤いりんごは、人の目のフィルターを通してそう認識しているにすぎない。はたして宇宙人が見たらそれは赤いりんごなのかどうか? つまり人は、その「物自体」にたどりつくことはできないというのがカントの主張で、それが人間の認識能力の限界だということです。

 ……なかなか厳しいですね。そのほかにも、カントは「人間は正しいことを無条件にしなければならない」という厳しい倫理を提起したり、「永遠平和を実現しなければならない」などと唱えたりしていました。こんな人と一緒にいたら疲れそうですよね。でも本人はそんな人生に満足していたようです。最後の言葉は「もうこれでいい」だったそうですから。

イマヌエル・カント/1724~1804年。『純粋理性批判』『実践理性批判』で知られるドイツの哲学者。「物自体」の概念により、大陸合理論とイギリス経験論を統合し、ドイツ観念論の源流となった

(哲学者 小川仁志)

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