一緒に住むための一戸建てを買ったのに、婚約者にあっさりとフラれ、死ぬことも考えた市役所職員の赤西民夫(田中圭)。ひとり空虚な日々を送っていたが、上司からの勧めで保護犬を飼うことになる。その真っ白な大型犬は、ワンと鳴けず「ハウッ」とかすれた声しか出すことができない。民夫は“ハウ”と名付け、戸惑いながらも温かい日々を過ごす。しかし、突然、ハウが行方不明になり……。
8月19日に公開される映画『ハウ』。田中圭さん演じる民夫からのコメントと、原作である『ハウ』(朝日文庫)を読んで生まれる、幸せな気持ちをお届けする。
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■田中圭さんからの素敵なコメント
■愛するペットは、唯一無二の存在
3年ほど前。学生時代からの友人が、「10年もの間、一緒に暮らした飼い犬が死んでしまった」、「悲しい、辛くて生きていけない」と目の前で涙を流していた。良かれと思って思わず、「新しい犬を飼ったらどう?」と言おうとした途端、その友人が「一番言われて嫌なのは『いろんな犬種がいるのだから、また犬を飼えばいい』ということ」と口にした。
『ハウ』(斉藤ひろし著)を読んで真っ先に思い出したのは、このことだ。それほどまでに、愛するペットは、唯一無二の存在で、家族同然だ。
■婚約破棄された時も、今に比べりゃ大したことじゃなかったし
特に夢中になれる趣味が無かった民夫の楽しみは、将棋だった。それがハウに出逢い、一緒に生活をすることで、毎朝、川原でボール遊びをして過ごす時間が増えていった。婚約者からこっぴどくフラれ、死ぬことも考えた民夫の傷ついた心を癒したのは、ハウだ。その心の動きがとても丁寧に描かれているので、まるで読者も一緒に“ハウや民夫”と過ごしている気になっていく。
あることが原因で、ハウは忽然と民夫の前から姿を消す。両親を早くに亡くし、兄弟もいない天涯孤独の民夫はまた、死を意識するが、上司からの勧めでカウンセリングを受けることになる。ペットロスで辛い思いをしている方々が来院する部屋で、民夫が吐露する言葉が心に響く。
「普通の犬じゃなかったんです」
「ハウを失ったことに比べたら親が死ぬなんて大したことないですよ」
「婚約破棄された時も、今に比べりゃ大したことじゃなかったし」