さらに言えば、『逃走中』はテレビ局だからこそ作れるスケールの大きいコンテンツでもある。テーマパークや遊園地を丸ごと貸し切って、名のあるタレントやアスリートを多数揃えて、撮影や編集にも十分な予算と手間をかけなければ、これだけのものを作り上げることはできない。

 今の時代、YouTubeをはじめとする動画コンテンツは世の中にあふれているからこそ、それぞれのメディアの特性に合ったコンテンツ作りが求められる。価値があるテレビ番組とは、テレビでしか見られないものを提供する番組である。『逃走中』はそんな地上波テレビならではのハイクオリティな番組である。

 ここまでに挙げた『逃走中』が人気を博している理由というのは、世界で通用するコンテンツの条件にもそのまま当てはまる。そもそも単純なルールなので、言葉や文化の壁がなく、世界中の人が楽しむことができる。

 これまでにも、日本のテレビ業界からは『風雲!たけし城』『SASUKE』などのアトラクション番組が世界に進出して、ワールドワイドな人気を博してきた。Netflixでの配信をきっかけに『逃走中』がそこに続く可能性は十分ある。『逃走中』という凄腕のハンターが、世界中の人々の心を捉えるのも時間の問題だ。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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