米国公的年金がリーマン・ショック以来の市場の暴落に苦しんでいる。約4400億ドル(約64兆円)の資金を運用する米国最大の年金基金・カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)は今年6月末までの12カ月間に6.1%の損失が出たことを発表した。今年、米国の年金資金は平均10.4%減少すると、年金基金の調査を行うNPOエクアブルは予測する。その一方で、私たち日本の年金積立金の今年度第1四半期の収益率はマイナス1.91%と、減少幅は米国と比べてずっと小さい。その背景には円安による恩恵がある。年金積立金の運用を行う年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に聞いた。
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9月30日のニューヨーク株式市場、ダウ平均株価の終値は2万8725ドル55セントと、今年の最安値を更新。年初来高値から21.94%も下落――。
欧米では金融引き締めによる利上げが市場予想を上回るペースで繰り返され、株式市場は大荒れの状態が続いている。
日米の金利差が拡大したことで、円相場も対ドルで24年ぶりの水準まで下落している。9月22日は1ドル145.88円と、年初来高値と比べて値下がり率は22.21%にもなった。
だが、何もかもが「下落」につながっているわけではない。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用する年金積立金の今年度第1四半期の収益率の下落は、わずか1.91%にとどまっている。これについてGPIF企画部の長岡絋史課長は「外国株式と外国債券の価格は下がっていますが、円安の効果によって、円建てで見ると下げ幅は限定的になっている、ということは言えますね」と、控えめに語る。
■円安で外国債券はプラスに
世界最大級の機関投資家であるGPIFの資産額は194兆7251億円(今年6月末日)。そのうち、ほぼ半分を外国株式と外国債券で保有している。すべての資産を円建てで管理しているので、円安になれば資産額は膨れる。年金は円で支払われるため、最終的に重要なのは円建ての資産額となる。
「今年度の第1四半期運用状況をご覧になっていただくとわかりますが、例えば、外国債券の利回りが上昇しています。すると、債券価格は下落しますが、それを円建てで見ると収益率はプラス2.71%をたたき出している。これは円安が寄与している、ということになります」(長岡さん)