「基本的に世界経済は長期的には成長していくものなので、その成長を適切にポートフォリオに取り込むという考えに基づいて、外国株式も組み入れています」(本多さん)

 しかし、外国資産を保有するリスクについて心配する声はいまも根強い。

「国内株式に期待される運用利回りは年率5.6%、外国株式は7.2%です。これについてのブレ幅は国内株式が23.14%、外国株式が24.85%。なので、確かに外国株式のほうが、若干リスクが高い。でも、国内市場が悪いときに海外市場がいいことがありますし、その逆もあります。そこが国際分散投資のキモです。いろいろな値動きをする国内外の株式や債券を組み合わせることによって収益のブレ幅を抑えられる。つまり、リスクを抑えられる、という設計です」と、長岡さんは説明する。

■数々の“暴落”を乗り越えた

 現在の基本ポートフォリオでは国内債券、外国債券、国内株式、外国株式をそれぞれ25%ずつ保有する。保有資産の数は極めて多く、2万953銘柄にもなる(22年3月末現在:国内株式2347銘柄、外国株式3573銘柄、国内債券4844銘柄、外国債券1万189銘柄)。

 GPIFに与えられた運用利回りの長期的な目標は「名目賃金上昇率+1.7%」。

「それをもっとも少ないリスクで達成するために、現在の基本ポートフォリオを定めて運用しているわけです」(本多さん)

 それでも、外国資産が暴落した際には巨額な損失を被る恐れがある、と主張する人がいる。だが、それについてはすでに明確な答えが出ている。未曽有の世界経済の大混乱、リーマン・ショック(08年)やコロナ禍(20年)による暴落を乗り越え、運用開始以来、年率3.56%の利益を出しているのだから。

「正直なところ、短期的に見れば、山あり谷ありですが、長期的に見れば積立金は右肩上がりに増えています」(長岡さん)

 しかし、これだけ円安になれば、価格が持ち直してきた時点で資産を売却したほうがよいのではないか。

「最近、そういう報道を目にすることが多いんですが、われわれは長期投資家なので、足元が円安だから売れ!とか、円高だから買え!ということはないんです。そもそもGPIFには国内債券の一部を除いて、株式や債券を売買する実行部隊はいません」(長岡さん)

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扱う積立金はわずか1割