NHKの国民的幼児番組「おかあさんといっしょ」において、出演者の交代は大事件である。特に子育て中の保護者たちは、テレビモニター越しに笑顔を振りまき、我が子を笑顔にしてくれる歌や体操のおにいさん・おねえさんを並々ならぬ思い入れで眺めている。その気持ちは、自身の子育ての軌跡そのものでもあって、番組ファンは「おかあさんといっしょ」のおにいさん・おねえさんを一層神格化して見る。そして今年、そのおにいさん・おねえさんの卒業を巡る情報によって、番組ファンの感情が激しく揺さぶられる顛末(てんまつ)が観測された。(フリーライター 武藤弘樹)
散々ささやかれる
「ゆういちろうおにいさん卒業」のうわさ
昨年2月、その当時メンバーの中で一番出演歴の長かったあつこおねえさん(うたのおねえさん)がその年度内いっぱいでの卒業を発表したことは、同番組ファンの記憶に新しい。記憶に新しいということは、痛みもまだ比較的鮮明だ。そのため、番組ファンの、出演者の卒業に対する警戒レベルは非常に高い状態にあった。
というのも、ファンは警戒すべき懸念を抱えていた。第12代うたのおにいさんである花田ゆういちろうおにいさん、通称「ゆういちろうおにいさん」である。ゆういちろうおにいさんは、番組ファンをハラハラさせる存在だった。
ハラハラさせる……といっても、ゆういちろうおにいさんが問題行動を起こしていたわけではない。「ゆういちろうおにいさんがそろそろ卒業するのではないか」という可能性を指し示す状況にハラハラしていたのである。以下に箇条書きする。どれも“そろそろ感”の臆測を強める材料である。
そうした中で「卒業が発表されるなら、例年この月」である2月になった。ゆういちろうおにいさんの卒業発表はあるのか、ないのか。ファンは固唾(かたず)をのんで成り行きを見守るはず……だったのだが、想像を超える事態になったのである。