2003年5月、京都・寂庵で誕生日に届いた花に囲まれ、笑顔を見せる瀬戸内寂聴さん(写真・勝山泰佑)
2003年5月、京都・寂庵で誕生日に届いた花に囲まれ、笑顔を見せる瀬戸内寂聴さん(写真・勝山泰佑)
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 400冊を超える本を書いた作家で、法話を通じて愛と平和を伝え続けた僧侶でもあった瀬戸内寂聴さん。2021年11月9日に99歳で亡くなって、まもなく1年がたつ。思い出されるのは、人々の心を一瞬にしてつかんでしまう「語り口」だ。朝日新聞出版が2011年から12年にかけて刊行した全30号のCD付きパートワーク「古寺をめぐる こころの法話」は、連載企画として「寂庵ほほえみがたり」を収録。この連載で寂聴さんは、人々から寄せられた多くの悩みに答えていた。2時間42分に及ぶその語りには、「いま」を生きていくためのヒントが多く含まれていた。

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 例えば、子どもが学校でいじめに遭っているという30代女性。「『不細工』『きもい』『死ね』などとひどい中傷を受けています。親としてどう助けてあげたらよいでしょうか」という彼女に、寂聴さんはストレートにこう答えている。

「私、いじめられたら転校したほうがいいと思うんですよ。いじめられても、先生はわざと知らん顔をするの。自分がそこをちゃんと定年まで勤めて、すうっと出たいから『うちの学校にはそういうものはありません』と言いたいわけですよね」

 そして自分の子ども時代を振り返ると、現代のいじめの背景に何があるのかを看破する。

「私のときは(今のようないじめは)なかったですよ。どうしてなかったんだろう。気がつかないなんて、そんなことはない。私が小学校のころ、男の子が女の子をちょっといじめたりするじゃないですか。そうすると、私が行って、『こらっ』と言って、そのいじめる子をやっつけていたから。向こうは、『あっ、またハーちゃんが来たぞ』と、ぱあっと逃げるの。だから、みんな怖がっていた。そういうのが一人いればいいんですよね」

「今の子どもっていうのは、自分と同じでなければ嫌でしょう。だから、自分よりもちっちゃいとか、太っているとか、それから、自分よりも器量がいいとか、そういうものがいじめになるんですよ。脚が長いとかね。だから、何かそういう、同じでないといけないとか、(違うと)気持ち悪いというものは、今までの教育が悪いんですよ。画一的にして、競争しちゃいけないとか、徒競走をして一番になってはいけないとか。『一緒にゴールに入りましょう』なんて、そんなばかなことね。そういう教育のせいだと思いますね、こういうのは。自分の不得手なものがあるとか、自分より優れた人がいるとか、それが社会なんだから、そこでそれを知ることのほうがいいんですよ」

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物欲はなくすよりコントロール