この店舗では、オンライン服薬指導を利用する患者は全体の3~5%だが、若者から高齢者まで幅広い層が利用しているという。「最初にNiCOMSの使い方をしっかりと説明すると、次回からは高齢者の方でもすんなりと使われています」。
すでにNiCOMSの運用開始から約2年が経過し、薬剤師はオンラインでの会話に十分に慣れたため、画面に映る患者に合わせて阿吽(あうん)の呼吸で話せるようになったという。
これまで患者は処方薬を購入する際、紙の処方箋を薬局に提出する必要があったが、来年1月からは電子処方箋の制度がスタートする。これをオンライン服薬指導と組み合わせれば、患者は処方箋の引き換え番号をスマホや電話で薬局に伝えるだけで、好きな場所で処方薬を受け取れるようになる。
アマゾンはこれを機に処方薬の販売事業への参入を目指しているわけだが、それが刺激となってオンライン薬局が普及し、同業者間の競争は激しくなっていくだろう。
都会の薬局との大きな違い
一方、地方の薬剤師はインターネットによる処方薬の販売について、どう考えているのか、長野県諏訪市で「ららくま薬局」を営む薬剤師・熊谷信さんに聞くと、都会の薬局とは大きく異なる事情が見えてきた。
まず、熊谷さんはアマゾンの参入について、「薬剤師の間ではポジティブな反応は薄いですね」と言う。その理由として「自分たちの仕事が奪われてしまうかもしれない、という心配が大きい」と漏らす。
「オンライン薬局が増えることで、利用者が奪われ、既存の薬局は立ち行かなくなるところが出てくるでしょう。現在約6万ある薬局は数を減らしていくと予想されます」
その影響が特に大きいと思われるのが地方だ。というのも、熊谷さんはあくまで肌感覚だが「地方にはインターネットに不慣れな人が多い」と言い、こう続ける。
「例えば、うちの薬局では処方箋をスマホで撮影して送ってもらい、それをもとに薬を用意する、というアプリを導入しています。ところが、それを高齢の患者さんに勧めても『うーん、いらない』という人が多い。なので、今後、電子処方箋が導入されてもそれを使いこなせるかというと、なかなか難しいでしょう。要するに、アマゾンがオンライン薬局を展開するようになっても、ネット弱者の患者さんたちが取り残されないようにすることが必要だと思います」