ヤクルト・山田哲人が鮮やかな復活弾だ。
オリックスとの日本シリーズ第3戦目。0-0の5回2死一、二塁で相手左腕・宮城大弥のわずかに甘く入った147キロ直球を振り抜くと、打球は左翼席へ。敵地・京セラドームで先制の3ランはチームに大きな勇気を与えた。試合の流れを引き寄せ、7-1で快勝。対戦成績を2勝1分として、球団史上初の2年連続日本一に向けて大きく前進した。
日本シリーズ第2戦終了時点で9打数無安打5三振。直球に差し込まれ、変化球にも泳がされる。打撃内容は重症だった。先発野手で2試合通じて唯一の安打なしに終わり、「逆シリーズ男」になる懸念さえあった。狂ったメカニズムを修正するためスタメンから外すことが予想されたが、高津監督の考えは違った。第3戦目は1番に抜擢。ヤクルトを取材するスポーツ紙記者は、驚きを隠せなかったという。
「リードオフマンの塩見泰隆が絶好調でしたからね。3番に置き、山田を1番に据えることで打線全体の流れが変わるリスクがある。1勝1分とシリーズの流れも良かった中で、高津監督はよく決断したと思います。他の監督ならこんな大胆な采配はできないでしょう。第2戦までの山田は走者をかえさなければいけないという意識が強すぎるように感じました。第3戦の3回にどん詰まりの二塁内野安打を打ち、日本シリーズ初安打を記録したことで肩の荷が下りたと思います。オリックスとすれば眠っていた山田を起こしたのでダメージが大きい。ヤクルトはこのまま一気にいく可能性があると思います」
オリックスも第3戦は打線を大幅に動かしていた。主砲の杉本裕太郎を5番から7番、吉田正尚を4番から3番、中川圭太を3番から6番に変更し、頓宮裕真を4番でこのシリーズ初のスタメンに抜擢した。だが、頓宮は初回2死三塁の先制機で空振り三振に倒れるなど4打数無安打。4回1死二、三塁の好機も中川、杉本が空振り三振に倒れるなど本塁が遠かった。だが、この打順変更が裏目に出たと、結果論で責めるのは酷だろう。第1戦、第2戦と共に3得点。いずれの試合も2ケタ安打を放ったが、あと1本が出なかった。相手左腕の高橋奎二は昨年の日本シリーズ第2戦目で、プロ初完封を許している。本拠地・京セラドームの同じ舞台で2度も抑えられるわけにはいかない。頓宮は今季右投手に打率.204に対し、左投手は打率.273と相性がいい。結果は出なかったが、中嶋監督の采配は理にかなっていると言える。