「餃子の王将」元社長の大東隆行さん(当時72)が2013年12月に京都市の本社前で射殺された事件。殺人などの疑いで京都府警に逮捕された、特定危険指定暴力団・工藤会系組幹部の田中幸雄容疑者は、08年に福岡市内で起きた銃撃事件の実行犯として裁かれ、服役中だった。その事件の裁判資料を見ていくと、王将の事件と類似点が多いことがわかる。
08年1月17日午後3時40分ごろ、福岡市博多区の路上で、大手ゼネコン「大林組」九州支店の社用車が銃撃された。4発撃たれ、すべてが車のフロントバンパーなどに命中。車内にいた3人の社員らにけがはなかった。
この事件で、銃刀法違反などの疑いで逮捕・起訴されたのが、田中容疑者と共犯者の2人だった。田中容疑者は懲役10年の実刑を受け、福岡刑務所に服役していた。
「08年の田中容疑者の事件記録は、13年に王将事件があって、そう時間をかけずに入手している。決定打の一つ、たばこの吸い殻のDNA鑑定もあったが、あまりに犯行態様が酷似していることが、田中容疑者の立件につながったことは事実です」(捜査関係者)
ゼネコン銃撃事件裁判の判決や論告などからは、王将事件と犯行の様子が非常に似ていることがうかがえる。
ゼネコン銃撃事件は、犯行に使った拳銃など直接的な物証がない状態で起訴された。
判決などによると、田中容疑者は、工藤会の二次団体・石田組の本部長。さらに石田組傘下の組長でもあり、自らの組員も抱えていた。田中容疑者は当時、犯行1カ月ほど前から自身の組員に指示し、犯行の準備をしていた。
狙う車のナンバーを組員に教え、
「(組員の車で)被害車両を追従し、その行動を確認したうえで、その動向について電話で被告人(田中容疑者)に報告した」と判決にはある。
そして、犯行数日前から、組員に大林組の事務所があるビルの駐車場出入り口を見張らせる。犯行前々日、前日には、田中容疑者自らが、
「作業服と白色長靴を着用してビル付近を歩いたり、さらにフルフェイスのヘルメットをかぶった人物が原付きバイクでビル付近を走行」
「ウィンドブレーカーのような上下の格好でフルフェイスのヘルメットをかぶった男がビルの様子をうかがっていた」
と下見している。