ところが、好中継でボールが戻ってきたことから、間に合わないと見た三塁コーチが慌ててストップをかける。
杉谷も慌ててUターンを試みたが、すでに三塁を回った時点で足がもつれており、帰塁できず、あえなくタッチアウトに……。“ランニングホームラン”(記録は安打とエラー)を狙わず、初めから三塁で自重していれば、後続打者で得点できていた可能性が強かっただけに、勇み足のオーバーランが悔やまれた。
さらに0対0で7回を終了した直後の午後4時7分、本来なら午後5時過ぎでもプレーは可能だったはずなのに、濃霧の影響もあって、まさかの前倒し日没コールドという珍事で引き分けに……。
日本ハムは5回の杉谷の珍プレーだけではなく、4回にも今川が三塁線安打で二塁を狙ってタッチアウトになったとあって、新庄監督は「踏んだり、踏んだりやったね。向こうも満塁(3回)で1本でない。こっちは走塁であーだこーだなるし、大笑いしてました」と、やることなすこと裏目の珍ゲームを振り返っていた。
乱闘寸前の事態をビッグボスが“神対応”で救ったのが、8月6日のオリックス戦だ。
オリックスが2対1とリードの3回1死、杉本裕太郎がフルカウントから田中瑛斗の7球目、内角高めシュートを背中の左側にぶつけられたのが、騒動のきっかけだった。
初回にも田中から左肘付近に死球を受けていた杉本は、怒りをあらわにして、マウンドに歩み寄った。杉本は7月19日の同一カードでも、田中にぶつけられており、これも「3度目だぞ!」と怒りに拍車をかけたようだ。
たちまち両軍ナインが飛び出し、一触即発の事態に。だが、直後、騒ぎは嘘のように収まった。
ベンチから出てきた新庄監督が右手を杉本の肩にかけながら、「悪いことしたね。申し訳ないです」と謝罪すると、杉本は「あっ、ビッグボスだ」と反応し、一転笑顔で「全然、大丈夫っすよー」と矛を収めたのだ。
さらに新庄監督は、ベンチに戻る際にも、前日内角攻めを受けた次打者・宗佑磨に「また(危ない球が)来るかも。気をつけて。ごめんね。(ウチの投手陣は)コントロール悪いから」とユーモラスに声をかけ、「笑かそうとはしてない」はずだったのに、爆笑させた。これも“ビッグボス効果”かもしれない。