さらに忙しい現代人にふさわしい、また栄養不足を補うスーパーフードとして、いろいろなプロテインが発見、開発されています。この地域では古代からいろいろな豆が食べられており、人々が初めて栽培した作物も豆でした。豆類は保存もしやすく、プロテインを豊富に含みますが、調理には時間がかかります。新たな技術は、体に吸収しやすい形に変えてフードロスのない製品化を目指しています。

 豆以外にもいろいろな素材から新たなプロテインを抽出する技術が模索されています。なかでも微細藻類から抽出するプロテイン製品は、これからの環境に良いのではないでしょうか。微細藻類は、最小限の栽培面積、水源などで栽培可能で、かつ高いプロテインを作り出す、まさにスーパーフードです。いろいろなハーブから抽出される成分をパーソナライズしてストレス減少を目指すスナックバーを開発するmyair社や、集中力を向上させる成分を発見したInnoBeve社などもあります。廃棄する食料を減らすためにAnina、Torr、UPLANDは乾燥技術を応用した野菜シート、栄養スナックや、お湯を注ぐだけで食べられる野菜たっぷりのメニューを作りました。

 現代、食生活の大きな課題のひとつが、砂糖使用量の削減です。7社がその課題に取り組んでいます。Sweet Victory社は、噛むだけで甘い物への欲求を抑えるガムを開発しました。JO・MO社は、砂糖を一切使わずに、シュガーフリーでおいしいチョコレートを作りました。Resugar社の甘味料は、現在使われている甘味料の中で最も砂糖に近い甘みを確保し、なおかつ砂糖使用量を減少させ、コスト削減になる新たな甘味料を開発しました。多くの企業が砂糖に代わる植物で甘みを見つけることが多いなか、DouxMatok社は砂糖自体の甘さ成分を長く舌で感じさせることで、砂糖の使用量を減らすことを可能にしました。

 このように、イスラエルではこの数年、フードテックがとても盛んです。イスラエルが技術立国になった一つの要因は、官・民・学が連携して、国家レベル・地域レベル・世界レベルの課題に挑戦していく体制があることです。フードテックの母体となるアグリテック(農業科学技術)も、イスラエルが建国した当初からの課題でした。

 今回の日本パビリオンに参加した有機米生産者の一人は、イスラエルのインキュベーターシステムや企業訪問ツアーに参加し、イスラエルの農場生産者、研究技術、企業が一体となったネットワーク・エコシステムにとても感銘を受けていました。新しい未来の食料は、今ある食品をもっと食べやすくし、健康に多くの人々が暮らせるための技術で開発された食材なのです。

(文/中島ヤスミン)

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