『東海地震』は日本で唯一予知可能性があると言われています。そして予知によって適切に避難・警戒行動を行えば、被害額は約6兆円減少し、7000人近くの命を救うことができるとも言われています。「いつか起きる」地震は「あした起きる」地震かもしれません。防災の日の今日は、『東海地震』について知り、備える日にしてみませんか?
この記事の写真をすべて見る『東海地震』とは?
9月1日は防災の日。「防災」と考えるとなかなか難しいものですが、万が一の時、知っていると知らないで命を守れる可能性が大きく変わってきます。今日は知っているようで知らない『東海地震』についてお話します。
静岡県駿河湾の海底に「駿河トラフ」と呼ばれる、ユーラシアプレートにフィリピン海プレートが沈み込むプレート境界があります。このプレート境界で、沈み込んでいるプレートに逆のプレートが引きずりこまれて、徐々に「ひずみ」が蓄積されていった結果起こるのが『東海地震』です。『東海地震』では、駿河トラフを震源域として、マグニチュード8程度の巨大地震が起こると言われています。
【東海地震が発生した際の各地の予想震度】
(震度7) 静岡県、山梨県の一部
(震度6強~6弱) 静岡県のほぼ全域および山梨県、愛知県、神奈川県、長野県、岐阜県の一部
(震度5強程度) 上記に隣接する周辺の地域
【東海地震が発生した際の予想される津波の高さ】
(5~10mところによりそれ以上の大津波) 伊豆半島南部、駿河湾から遠州灘、熊野灘沿岸および伊豆諸島の一部
(ところにより3m以上) 相模湾と房総半島
【想定される被害】
内閣府によると、地震の揺れや津波・それに伴う火災などにより、建物全壊約26万棟、死者数約9,200人、経済的被害は約37兆円と予想されています(※ただし、シナリオによって変動あり)。また、地震発生後の約1週間で避難者数は約190万人にもおよぶと考えられています。
「いつ起こってもおかしくない」のはなぜ?150年以上蓄積され続ける「ひずみ」
よく、「近いうちに東海地震が起こる」と言われているのをニュースで聞きませんか?
なぜ「いつ起こってもおかしくない」と言われ続けているかというと、実はこの駿河トラフ周辺の海域では、昔から100~150年の間隔で大規模な地震が発生しているのです。しかし、直近の1944年東南海地震でひずみが解放されず、結果的に1854年安政東海地震から162年間大地震が発生していないことになるため、「かなりのひずみが蓄積されている」ことが予想され、いつ発生してもおかしくないと考えられています。
東海地震は日本で唯一予知できる地震
「緊急地震速報」の本運用が開始されてから、今年で9年になりました(2007年10月1日より本運用開始)。ただ残念ながら、緊急地震速報は「地震の発生前の予測」ではなく、「”震源で”地震発生直後に、各地での強い揺れを予測し、すばやく知らせる情報」です。もちろん震源から離れた地域では、その場が揺れる(S波が到達する)前に情報を伝えることができるので有用です。一方、震源から揺れが到達するまでの時間は、数秒から長くても数十秒程度ときわめて短いため、震源に近い地点では揺れる前に報知することが難しいのです。真の地震の事前予知は、現在の科学では未だ不可能とされています。
しかしながら、東海地震とは、日本で唯一、直前予知の可能性があると考えられています。その理由は、
・前兆現象を伴う可能性があること
・想定されている震源域周辺に精度の高い観測網を整備できたこと
・捉えられた異常な現象が前兆現象であるか否かを科学的に判断するための考え方(前兆すべりモデル)があらかじめ明確化されていること
ゆえです。唯一、天気予報のように事前に情報を入手し、避難行動に繋げることが可能なのです。
とはいえ、
・「直前予知」は「○月○日○時」という詳細な推測ではなく「数日中に発生するおそれがある」という程度であること
・確実の前兆現象を捉えられる保証がされていないため、100%予知できるわけではないこと
この点には十分に注意が必要です。
”直前予知”をキャッチしよう『東海地震に関する情報』
この『東海地震』の直線予知を知るための情報が気象庁から発表されています。情報は3段階に分かれています。
【東海地震予知情報】
東海地震が発生するおそれがあると認められ、内閣総理大臣から「警戒宣言」が発せられた場合に発表される情報です。「警戒宣言」が発せられると、地震災害警戒本部が設置されます。
そして私たち住民に対しては、津波やがけ崩れの危険地域からの住民避難や鉄道や一般車両をはじめとした交通規制、銀行や百貨店等の営業中止などの対策が実施されます。
【東海地震注意情報】
観測された現象が東海地震の前兆現象である可能性が高まった場合に発表される情報です。
情報が発表されると、災害時用援護者の避難対策や、必要に応じて児童・生徒の帰宅等の安全確保対策、対象地域への長距離列車の進入禁止といった「準備行動」がとられます。
【東海地震に関連する調査情報】
「臨時」と「定時」の2種類あります。「臨時」は観測データに通常とは異なる変化が観測された場合に発表される情報です。一方で「定時」は毎月の定例の地震防災対策強化地域判定会(以下、判定会)で評価した調査結果を発表する情報です。
いずれも防災対応は特に必要ありませんが、日頃から東海地震への備えは忘れないようにしましょう。
なお、「予知情報」による事前の避難や警戒行動があれば、建物の全壊棟数約3万棟、被害額は約6兆円減らすことができ、さらに死者数は2300人にまで減らすことができるとも言われています。
『東海地震に関する情報』は気象庁のホームページなどで確認できます。「いつか」は「明日」かもしれません。今夜は、あなた自身を、そして身の回りの人を守るための備えを始めてみませんか?