身長183センチの長身でがっちりした体格の嶋さんだが、物腰は柔らかく勉強熱心だ。「役者の世界で先輩方と共演し、勉強させてもらった。芝居はなるべく力を抜くことを心がけています。台本を読み込んで。相手のセリフを読むようになりました。最初は自分のセリフばかり覚えていたんですけど、相手の感情を受け取っていないと思いだして。今の若い俳優さんもすごいですよ。小栗旬君、山田孝之君とか芝居がすごくうまい。感情表現が勉強になる」と熱弁する。

 昨年7月には人生の恩師とのつらい別れもあった。横浜銀蝿のリーダーでドラマーの嵐ヨシユキさんが67歳で逝去。嶋さんはデビュー前から嵐さんの付き人を務めていた。

「嵐さんがいなかったら、僕はこの世界にいない。銀蝿一家で僕が一番早く辞めて。『役者に挑戦したいから辞めさせてください』と伝えたときに、ぶん殴られることを覚悟したら、『分かった。それがおまえの進む道なんだろ。行け』って背中を押してくれました。銀蝿が復活したときも気まずさ、後ろめたさがあったんですけど、呼んでいただいて。本当にありがたかった。『銀蝿一家祭』(21年12月)でお会いしたときも、嵐さんはリハーサルのときに倒れて救急車で運ばれたんだけど、本番はステージに立っていた。ドラムをたたいている姿を見ると泣けてきて。僕は『男の勲章』で大ヒットして注目してもらえたけど、調子に乗る暇がなかった。そんな態度を取ったら先輩たちから物が飛んできますから。今でも『おい、大輔!』って呼ぶのは銀蝿のメンバーの方々しかいない。30年経ってもリハーサルで『てめぇー!バカやろう!』って怒られて……懐かしいなあって」

 銀蝿一家を離れても、感謝の念を忘れることはなかった。コロナ禍でファンとの交流がなかなか実現できなかったが、今後の活動である計画を立てているという。

「(銀蝿一家の)矢吹薫、ミッツとは今も連絡を取り合っていて、『何かやりたいな』って話しています。2年前の銀蝿一家祭でも、銀蝿の特攻服、リーゼント姿の中年のファンの方たちの姿を見たらうれしくてね。応援してくれているファンに恩返しをしないといけないなと思っています。詳細はまだ言えないですが、60歳を迎えるタイミングでいろいろ考えています。僕自身も芸能界に戻って、今度は裏切れない。体が続く限りやっていきたいです。引退と言わなきゃ引退ではないですから」

 嶋さんの目が輝く。赤い中ランで「男の勲章」を熱唱する姿が見られるかもしれない。月日を経て幸せのカタチは変わったが、これからも突っ走り続ける。

(今川秀悟)

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