

「コンビニ百里の道をゆく」は、50歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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世界で新型コロナウイルスの感染が拡大しています。今回、大きな被害を受けている武漢にローソンは約400店舗出店しています。ですが、現在営業しているのは、約150店舗です。全て休業しては生活に支障をきたすと、政府から要請を受けており、武漢でエリアライセンス契約を結んでいる「中百」社が可能な限り営業を続けようと、頑張っておられます。
もちろん、営業時間は柔軟に対応されていますが、病院のそばの店では、頑張る医療スタッフのためにもできる限り長く営業しようと努力されています。物流にも制限があるなか、必死に商品を集めている状態です。国の一大事に直面して、現場で責任を果たそうと多くのスタッフが力を注ぐ様子には、本当に心を打たれます。
中百に連絡しました。ビジネスパートナーであり、仲間でもある彼らの力に少しでもなりたい。マスクや支援金を送るといったことはもちろん、何でも言ってください、と。中百の総経理(社長)からの返事には、こう書いてありました。
「山川異域、風月同天」
これは、「別の場所にいても、自然の風物はつながっている」という意味です。
実はこの言葉、約1300年前に日本の長屋王が唐に送った袈裟の刺繍が始まりだと言われています。古くからの交流に歴史と絆の深さを感じます。離れてはいても、心を寄せていたいと思っています。
私たちが震災や台風に遭ったとき、海外からのメッセージに多くの人が勇気をもらいました。当初、日本から武漢に送られた物資にも先ほどの言葉が書いてあり、現地の方は励まされたと聞きました。
中百からの手紙には、「ウイルスには情はないが、人間には情がある」という言葉もありました。中国のスタッフと連携して、できる限りの支援をしていきます。
※AERA 2020年3月9日号