摂食障害(拒食症・過食症)は10~30代の女性に多く、医療機関を受診する患者は年間約22万人。しかし専門的な治療を受けられる医療機関が少ない上に、情報も乏しく、未受診の潜在的な患者や予備群はその何倍もいると考えられている。国立国際医療研究センター国府台病院(千葉県市川市)は早期治療につなげるため、全国の患者や家族の相談に応じる「摂食障害全国支援センター:相談ほっとライン」を2022年1月に開設した。寄せられた相談を解析したところ、6割は医療機関に受診経験があり、治療がスムーズに進んでいなかったり、通院をやめてしまったりするケースが多いことがわかってきた。同院心療内科診療科長の河合啓介医師に話を聞いた。
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ほっとラインに寄せられた相談は、開設時(2022年1月11日)から23年1月末までの約1年間で856件。分析は2022年10月末までの数字で未受診患者は22%だったのに対し、受診経験がある人は「受診中(41%)」と「中断(16%)」を合わせると57%にのぼり、それ以外にも19%がうつや依存症など他の精神疾患で通院中だった。
河合医師はこう話す。
「未受診者が多いと思っていたので、この結果は予想外でした。さらに相談内容から、病院とつながっていながら治療がうまく進んでいない状況や、『医師や病院の対応に十分納得できていない』と話す患者さんやご家族がいらっしゃることも明らかになりました」
■医師の言葉がきっかけで、通院を中断してしまうケースも
寄せられた相談で多かったのが、医師の言葉や態度に疑問を持ったというもの。
「自分が治る気にならなければ一生治らないと言われた」「過食嘔吐で悩んでいるのに、『普通体重だから問題ない』と言われた」「体重が増えないなら、鼻からチューブで栄養を入れることになるよと、脅すような言い方をされた」など、受け取り方はさまざまだ。
また、「診察時間が短すぎる」「話をちゃんと聞いてくれない」「入院を勧められているが、娘(患者)は嫌がる。転院したい」「ずっと通院しているが良くならない。治療が間違っているのではないか」といった治療に関するものも多かった。