作者は「OjohmbonX」とあり、SNSでたどると「ふつうの会社員(34)」だという。興味のある方はご一読いただきたい。どのように代替わりし、当事者がどう感じたか。手続き面も心情も、制度やその問題点と照らし合わせて、実に説得力がある。冷静に皇室制度を見つめている。
同時にこの小説の説得力を増しているのが、日本と世界を見る目も冷静だということ。この国の行方を、限りなく悲観的にとらえている。
2050年、世界は「資本と国家と民族の軋轢(あつれき)が限界に」達している。日本は「国際情勢の綱渡りをかろうじてやりきったとしても国内の経済的な豊かさには結び付かない。せいぜい『ひどい悪化を回避する』ことにはなっても、『良くなる』ことにはならない」状況だ。
その中で唯一、否、唯二、輝きを放っているのが愛子帝と芦田首相だ。その輝きを私なりに表現すると、「度外れて優秀」&「解を持っている」だと思う。2人はクールでありながら、動じず、ことを進めていく。
そこでの芦田さんは慶應大学からカリフォルニア大学バークリー校に進み、中東専門の政治研究者から政治家になる。3歳上の愛子帝とは、カジュアルな言葉で本質を語り合う仲だ。一方の愛子帝は都市工学、中でも都市計画史を専門とし、博士号をとっている。英仏独伊西語に加え、中国語、韓国語、タイ語に精通している。
現実の「AA」を知っているから、リアルな設定に思える。言うまでもなく愛子さまの母である皇后雅子さま(56)は、ハーバード大学→東大→外務省という華麗な経歴の持ち主だ。その娘が優秀でないはずがないと、誰もが思う。芦田さんは、これも言うまでもないが天才子役で、読書家としても有名な慶應中等部3年生。四谷大塚によると女子の場合、「偏差値70」で慶應中等部の合格率80%だという。
週刊誌「女性セブン」は愛子さまの偏差値を「72」としている。7月11日号「愛子さま『東大かオックスフォード大か』偏差値72の選択肢」が報じている。学習院女子高等科の文系クラスで、成績は常にトップクラス。同科からは毎年、東大に進む生徒もいる(18年度は学年で3人)。そこから「偏差値は70から72ほど」と進学塾関係者が類推している。(コラムニスト・矢部万紀子)
※AERA 2019年12月30日号-2020年1月6日合併号より抜粋