皆川:青空にはいつも満天の星が存在している。見えなくなったとしても、それは一時的なもので、事実は多面的にある。そんな思いを込めてデザインしたものです。道端の石ころでも、ひっくり返すといろいろな面があって、それまで見えていなかったことが見えてきますよね。自然に目を向けることは、自分を救うことでもあります。
──高校時代、皆川さんは陸上長距離選手、田根さんはサッカー「ジェフユナイテッド市原」(現・千葉)のユース選手。お二人はアスリートという背景もありますね。
皆川:ミナの世界にはゆっくりとした時間が流れていると言っていただくことが多く、僕もそれを意図しています。が、実際はずっと走りながら考えている、という感覚ですね。ゴールには執着していると思います。受け取る人の評価とは無関係に、自分がどこまでやり切るか、という意味です。
田根:サッカーはチームスポーツで、動きながら瞬時に判断を下し、全体で結果を出していく。しかも、90分間連携していたとしても、負けたら終わりで、結果がすべてです。勝負の世界で、現実をどう受け止めて先に進むか、駆け引きの中で鍛えられたと思います。
皆川:空間構成では、土壇場のダメ出しも必要でしょう。今回もそういう局面がありましたけど、あれ、言い出すのに勇気がいりますよね。
田根:内心は怖くて震えています。でも、それこそ結果がすべてですし、想定内じゃ驚きも喜びもない。それでよく怒られていますが(笑)、土壇場を超えるとまた、みんなのやる気が強まっていくんですよね。
皆川:僕はこの展覧会の準備中、スタッフから「それはギリギリです」と言われて、「やった!」と言いました。「ギリギリ」って、僕にとっては「できると思える」境目のことだからです。「ギリギリ」ということはできるんだな、と。
田根:皆川さんは判断も速いですよね。
皆川:普段からあまり悩まない。判断をあおがれた時は、「反応する」ようにしています。たとえば、4対6の比重で、二者択一のアイデアがあったとします。普通は6の方を正解にすると思いますが、僕はどっちを取ってもやっていけると思っています。4を取ったとしても、アイデアの展開を間違えなければ大丈夫ですから。それより、「やりたい」「いい」という直観を大切にしています。