AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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社会規範や意識の中の性差別に異議を唱え、女性解放と自分自身の解放を目指したウーマン・リブ運動。1970年代初頭のこの運動を牽引した田中美津さんを4年間にわたって追ったドキュメンタリー映画が「この星は、私の星じゃない」だ。
吉峯美和監督(52)と田中さんの出会いは、2015年にNHK・Eテレで放送された戦後70年の女性史をたどる番組がきっかけだった。番組を担当するまでウーマン・リブについてほとんど知らなかったという監督だが、田中さんの著書を読み一気に魅了された。当初は番組出演に難色を示していた田中さんだが、監督のあまりの熱意に「断るより受けた方がラクだと思った」と取材を受けてくれた。
「田中さんの話は、女性解放も大事だけど私の解放はもっと大事、ということ。いまの人たちに向けるメッセージになっていると思いました」
自宅での日常や沖縄・辺野古や久高島をめぐる旅から、生まれ育った東京都文京区本郷界隈を訪ね歩くシーンまで、カメラは田中さんに寄り添っていく。時折ウーマン・リブ運動の貴重な資料映像も挿入されながら、映画はいつしか田中さんの心の旅、魂の旅という様相を帯びてくる。言葉を大事にしたい、田中さんの言葉をすべて記録したいという思いで、ピンマイクと録音機をつけてもらい、文字起こしもした。
そんな田中さんと監督の4年という時間の中で、徐々に田中さんの内面と監督自身の内面の重なる部分が見つかっていったという。
「田中さんを撮っているようでいて自分を撮っているような感じでした。撮影していくうちに、表面的な女性解放運動のカリスマの物語ではなく、傷ついた女の子がどうやって生き抜いたかという話になっていきました」