竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
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受賞決定後の記者会見でも、ご夫妻そろって笑顔が魅力的でした
受賞決定後の記者会見でも、ご夫妻そろって笑顔が魅力的でした

「コンビニ百里の道をゆく」は、50歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

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 リチウムイオン電池を開発した旭化成名誉フェローの吉野彰さん(71)のノーベル化学賞受賞が決まりました。日本の方が世界レベルで活躍することは本当に素晴らしく、話を聞くたびに勇気と希望をいただいています。

 吉野さんは会見でゴルフの渋野日向子選手の名前を挙げて、「明るい話題が子どもにとって将来を決める一つのきっかけになれば」といったことをお話しされていました。スポーツ選手たちの奮闘はもちろんですが、吉野さんの活躍にも、子どもたちだけでなく、若い研究者たちも励まされたのではないでしょうか。かくいう私も若くはありませんが、大いにモチベートされました。

 テレビ越しですが、偉業を成し遂げたのに、あっけらかんとした笑顔。お人柄も素敵です。喜びを素直な気持ちで表現できる方だからこそ、研究にも没頭して数々の成果を出されたのかなと想像したりしています。

 こんなにも役立つものを作ったのに、それが活かされているガラケーを持ったことがなく、スマホは5年前から持ち始めた、というユニークな話もありました。

 ある番組で話されていたことですが、吉野さんの感覚では、研究においてひらめきが成果につながる確率は100万分の1くらいだそうです。難しいと思いがちですが、そこは吉野さん。10分の1の正解を6回積み重ねれば、100万分の1になると。なんだか錯覚かもしれませんが何かできそうな感じがします。目の前のことに集中して、答えを出し続けたことの積み重ねがリチウムイオン電池となり、ノーベル賞につながった。

 最初はまったく売れなかったそうですが、勝機は誰も見向きもしないところにあるのかもしれません。分野や規模は違いますが、我々ローソンも一つひとつ丁寧にチャレンジを積み重ねていきたいです。

AERA 2019年10月28日号