経営指標で見る「ライバル比較」
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 受験生やその保護者にとって気になるのは、やはり受験する可能性がある大学の経営指標だろう。本来は大学病院の有無、系列校や一貫校の有無など法人ごとの収益構造の違いにも留意してグループ分けするのが望ましいが、読者の利便性を考え、「関関同立」など偏差値が近く併願対象になることが多い大学のグループごとに比較した。AERA 2019年10月21日号に掲載された記事を紹介する。

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 早慶上理ICUの上位校は、いずれも資産運用力が高い。資産運用力は教育環境の充実や成長性を大きく左右する指標だ。

 特徴的なのが、1953年に開学した国際基督教大学(ICU)だ。JPモルガン出身で自身も卒業生の新井亮一常務理事(55)が言う。

「うちでは教育研究活動での収支は常に赤字。それを補うためにリスクをとった資産運用を続けてきたし、原資となる寄付も比較的多く集まります」

 少人数教育で知られ、学生1人あたりの教育費がかさむICUでは、70年代に得た土地の売却益などを原資に、資産運用を続けてきた歴史がある。

「これをみてもらえれば、一目瞭然です」

 示されたのは、経常費用をどのような収入でまかなってきたのかを示すグラフ。開学当初は寄付金の占める割合が高かったが、70年代から急激に資産運用による収入が増え、ほぼ半分を占める時期が十数年続いた。リーマン・ショックでいったんは資産運用収支がマイナスになったが、この10年ほどはまた資産運用が大きな割合を占める。

 2018年度末の資産構成は、多くの大学で比率が高い現金や債券をいずれも3%に抑えているのに対して、ヘッジファンドが40%と突出している。国内大学の平均が2%の株式も、海外株を含む30%に達する。

 大学の決算は取得時の価値をベースにした「簿価」で発表され、ICUの18年度の直接利回りは1.65%。だが現在の価値に合わせた「時価」で計算すると「実はマイナス」(新井常務理事)という。リスクをとった運用のため、時価は市場環境次第で変化する。単年度は赤字でも、過去10年間の時価ベースの平均利回りは年率4%弱。高い運用力で、教育研究活動の赤字を埋めてきた。

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