「要するにSVBはベンチャー・エコシステムの中で、ベンチャーキャピタルとスタートアップ企業によるビジネス活動に依存しすぎていたんです」

 米国の大手銀行の場合、個人預金の割合は4割から7割ほどだが、SVBはわずか1割ほどだった。

悪夢の逆回転が始まった

 低金利下ではベンチャー・エコシステムはうまく回転し、SVBに多大な利益をもたらした。

 ところが昨春、金利が上昇に転じると逆回転が始まった。しかも、悪循環の速度はみるみる上がっていく。

 9日、SVBはもう耐えられないのでは、という見方が広まり、大量の預金が引き出された。そして前述のとおり、翌日、経営破綻した。

「大量の預金が引き出されたもう一つの原因は、預金のほとんどが法人預金だったからです。法人預金は個人預金よりも預金額がずっと大きい。アメリカの銀行では預金は1口座あたり25万ドルまで保護されます。保護対象となる預金は、大手行の場合、平均すると全預金の5割程度ですが、SVBの場合は1割程度だったようです」

 預金が保護されれば、急いで引き出す必要はない。

「ところがSVBの顧客のほとんどが25万ドル以上を預けていたから、経営がうまくいっていたスタートアップ企業までもが危機感を覚えて預金引き出しに走ってしまった。そんな企業は多かったのではないでしょうか」

※この記事は<<「米銀行破綻は日本の地銀に連鎖する」の声は本当か? 大手行への影響可能性は「ゼロではない」と専門家>>に続く

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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