孫:高齢者といっても好奇心が旺盛な方や、新しいことにチャレンジしている方は元気で、人付き合いも活発です。10年前は認知症というと暗いイメージがありましたが、最近は「注文をまちがえる料理店」もあります。軽度の認知症がある高齢者が店員をするイベントで、注文を間違えることも込みで来てくださいね、っていう。

小島:面白いですね。

孫:そうやってポジティブに病気をとらえる取り組みも増えたと思います。小島さんのミニチュアもそれに繋がるというか。基本的にはみんなが見たくない現場を、ミニチュアという形なら、エンターテインメントじゃないですけれど、興味を持って見ることができるので。

 死の現場は壮絶だ。死を目の前にした本人や遺族などから感情をぶつけられることもあるだろう。その現場でも、二人は「対話」を大事にしているという。

小島:故人に対する罵倒をぶつけられることはあります。「家族を捨てた人なのに、どうして私が処分費を払わなきゃいけないの」とか。不満を誰にも発散できない状態だと思うので、なるべく「大変ですね、そういうことがあったんですね」と聞いて共感するようにしています。

孫:医療現場は、感情労働とも言われますが、特に終末期や死を前にした人は必ず怒りがあります。怒りやあきらめという段階があって、最後は受容という段階に移るんです。怒りをぶつけられても、そういう心理段階なんだと思うようにしています。医者は理屈で返してしまいがちですが、論理的すぎると怒りを増幅させてしまうこともある。基本は時間をかけて、寄り添って聞くことだと思います。

小島:遺品整理を遺族の方と一緒にやる機会があるんですが、はじめは他人なので喋ってくれないんです。でも作業しながら、亡くなった人がどういう方だったのか、聞くようにしています。思い出のものを見ながら「これが好きだったんですか」って。するとだんだん思い出を喋ってくれて。終わった頃には、少し心が軽くなってもらえたらいいなという思いがあります。

次のページ