現状、世界経済に大きな影響を与えそうなのがハードブレグジットと香港のデモでしょう。予想外のハードブレグジットはジョンソンが首相になって加速してきたと言えるでしょう。ポンドもすでに最安値、1.2ドルまで下がっていますのでかなり影響が大きいと思われます。ユーロはさらに弱体化するでしょうし、イギリス自身も今後のビューがあるようには思えません。天下の大英帝国だから何とかなるんじゃないか、などと無責任なことは言えそうですが、方向性は全く見えません。

 そして香港のデモ。これは米中の関税合戦などとは違ったマグニチュードがあります。関税合戦と言ってもアメリカの中国への輸出自体がせいぜい年間1200億ドル程度ですから、影響があるはずがない。しかも最後は金で解決できるでしょう。ところが香港のデモは次元が違います。すでにG7サミットの成果文書で香港の自治を擁護し平静が呼び掛けられたことを受け、中国政府は27日、「強い不満」を表明したと伝えられています。香港は中国の一部だから余計なことを言うな、ということです。

 この件は既にトランプ大統領もツイートしていますが、国家に対する認識の違いですから、金では解決できません。エスカレートすればまさに米中激突となり、影響は貿易問題とは比較にならないでしょう。これがこの時期に起きるとは年初には予想できませんでしたが、危機を招くとすると経済問題(金で解決できること)ではなく、こうしたイデオロギーの対立であることは間違いありません。当面はハードブレグジットと香港に注目です。

AERA 2019年9月9日号

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