結果には、先祖がどこから来たのかという項目もあった。「70%は中国の北方、10%は南方。何と10%は外国人でした」と驚く。しめて3196元(約5万円)。王さんは「高くないなと思う」と話す。
ところで、結婚相手や子どもの教育方針を左右するほど、DNA検査は信頼できるのか。
慶応大学文学部教授(教育学)で、ふたご行動発達研究センター長の安藤寿康さんは「DNA検査で適性や才能を知ることは理論的には可能だが、今の技術で正しく測定できるとは言えない」と指摘する。では、どの程度信じればいいのか。
「ただの占いとまでは言わないが、確率の低い天気予報みたいなものだと考えたほうがいい。天気予報を見て傘を持っていくかどうか決めるのは自分。DNA検査の結果を見てどう行動するかも、自分の責任です」
何世代も前の祖先の出身地まで分かるDNAは、「生命の設計図」と言われる究極の個人情報だ。だが、検査のビジネスモデルを見ると危うさもはらむ。
検査を手がける中国企業は雨後の筍のように生まれ、17年秋の時点で230社超にふくれあがった。参入者が後を絶たないのは儲けの大きさが理由だ。報道によると、その利益率は7~8割に及ぶこともあるという。検査機器さえあれば、あとは数をこなすだけ。価格はあってないようなもので、1件数百元から数万元まで設定は様々だ。
中国当局の管理は緩く、全ての企業が厳密な情報管理をできているのか、懸念はぬぐえない。6月には、香港から中国側の深センに陸路で183個もの唾液サンプルが無届けで持ち込まれる事件が発覚した。持ち込んだ人物は税関の取り調べに「北京でDNA検査する予定だった」と答えている。
アメリカでは最近、一部のDNA検査サービスで、実際の検査が中国企業で行われている可能性があるとの報道があった。日本は大丈夫なのか。国内で販売されているサービスのうち、相性判断にDNA検査を用いる結婚相談所ピープルと、国内で受けられる主な遺伝子検査サービスを提供する3社はアエラの取材に対して、「中国企業に検査を依頼していない」と明言している。(編集部・小田健司、朝日新聞中国総局・福田直之)
※AERA 2019年7月29日号より抜粋