「たまに公園で遊んだら、それはそれで面白いねんけど」という意見が出てきたので、「じゃあ、なんで普段は公園に行かへんの?」とさらに問いかけます。
すると、「やっぱり家でテレビゲームで遊びたいし……」といまひとつ歯切れが悪い返事が返ってきました。
ゲームが面白くてやめられないというのは紛れもない本音でしょう。しかし、そこには自分なりの工夫が全くないことに彼らも気づき始めていたのです。
私はこのやりとりを通じて、探究堂の遊びの時間は子どもたちにとって貴重な外遊びの機会になっていることを改めて実感しました。
「じゃあ、最後に子どもの遊びと社会の動きがどうつながっているかについて考えてみよか」
私からの問いかけに対し、子どもたちは少し思案しながら語り始めます。
「おじいちゃんやおばあちゃんが子どもの頃は、戦後でものがないから、(身近にあるもので)工夫して遊ぶしかなかったんやなあ」
「家にテレビがないっていうのも、外遊びに出かける理由の一つなんやと思うわ」
「アスファルトじゃない土の道もまだあったみたいやし」
「(団塊の世代で)近所に子どもも多かったから、遊び仲間には困らへんもんね」
年表や資料で当時の深刻な経済や社会情勢を学んだことで、祖父母からの手紙の内容をより具体的にイメージできるようになった様子がうかがえます。
親世代の特徴に関しては、以下のような意見が挙がりました。
・テレビ番組やCMをきっかけにしてはやる遊びが多い
・家庭用コンピューターゲーム機の登場が子どもの遊びの歴史を大きく変えた
・遊具が充実している公園が増えてきた→遊べる場所が限られてきたことの裏返しではないか?
最後に、中学年クラスのメンバーは自分たち世代の遊びの特徴をユニークな表現で説明していました。
「お父さんたちは隣の人とゲームしてたやろ。けど、僕らは世界中の人とつながって一緒にゲームをプレーしてるよね」
インターネットの普及により、国を超えてつながっているという感覚。何ともデジタルネイティブの彼ららしい意見だと妙に感心したことを覚えています。
子どもの遊びと世の中の動きのつながりを探究する営みもいよいよプロジェクト発表会を残すのみとなりました。
※AERAオンライン限定記事
○山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。