AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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「ノーカントリー」や「007 スカイフォール」などで悪役を熱演し世界を凍り付かせたスペインの名優、ハビエル・バルデム。新作「誰もがそれを知っている」はイランの誇る名監督、アスガー・ファルハディの家族サスペンスドラマ。妻であるペネロペ・クルスとの共演も見どころだ。
「もちろん役について話しあうが、子どもがいるから家では日常会話が中心だよ。だから家の外でキャラクターになりきるんだ。妻と一緒に仕事するのは喜びだった。一緒に役になり一緒に役から抜け出る。24時間役になりきるより、はるかに創造的だと思うな」と妻との共演について語る。
ペネロペ演じるラウラが、妹の結婚式のために故郷スペインに戻ってくる。結婚式後の宴で彼女の娘が誘拐され、解決を模索する中、バルデム演じる幼なじみのパコとラウラ、その家族との複雑な関係がひもとかれる。犯人はいったい誰……。観客をぐいぐいと引きこむドラマは、監督が5年もかけて構想した。バルデムは、スペインの家族関係を見事に書き上げた脚本を絶賛する。
「アスガーは家族をイランに残し一人でスペインにやってきて、一人で部屋にこもり脚本を書き上げた。スクリーンで起こることの99.9%は彼が書き上げたものなんだ。さすがに敏腕の監督だよ。僕らスペイン人は台詞のニュアンスをアドバイスした程度だよ」
そしてパコという役についてはこう語る。
「シンプルな男だよ。多くの時間を費やして、先のことを打算的に計画したりしない。利己的ではなく今を生きている男なんだ。パコはアスガーが一番興味を抱いているような人間、彼の映画にたびたび登場するようなキャラクターだよ。他人のために自分を犠牲にするような。自分の周りにいる人たちのことを思っているんだ。日常的なレベルで」
ハリウッドやスペイン映画を中心に、アクションからコメディーまで多彩な役をこなしてきた。自分の演技が最も光る役はどれかと聞いてみた。