10連休が明け、今年は例年以上に不調者・退職者が続出している。本人に代わって職場に退職を申し出てくれる「退職代行サービス」にも、連日多くの問い合わせがある。
「弁護士による円満退職代行」を掲げてサービスを提供するフォーゲル綜合法律事務所には、「連休明けに退職したい」という依頼が殺到した。嵩原安三郎弁護士(49)は言う。
「連休が明ける5月7日の朝に会社に電話してほしいという依頼が30件以上ありました。相談だけならその3倍は来ていた。月別でみても、5月は20日の段階ですでに過去最多です」
連休明けに退職代行を依頼すると聞くと、「長い休みで遊びほうけた新人が安直に逃げ出した」と感じるかもしれないが、嵩原弁護士の印象は違う。
「10連休中にじっくり考え、ようやく決心できた人が多かったようです。普段は忙しすぎて退職を考えることすらできなかった方が、少し時間ができて、やっと冷静に考えられたんだと思います。新入社員からベテランまで、幅広く依頼がありました」
4月に派遣の医療事務として地方の病院に就職した女性(22)は、連休明けに代行を依頼して退職した。別の退職者の補充としての採用で、当初は1カ月かけて引き継ぎをする予定だったが、前任者は彼女が働き始めて2週間で退職してしまったという。本格的に引き継ぎを受けられなくなり、ほかに業務を教えてくれる人もいない。しかし、責任だけがのしかかった。
お金を扱う部署でミスができないというプレッシャーに加え、同僚の看護師らからもきつく当たられた。わずか1カ月で動悸、不眠、めまいを訴えるようになり、連休中にフォーゲル綜合法律事務所に依頼したのだ。嵩原弁護士は言う。
「うつやパニック障害などに陥って労災案件となる一歩手前のようなケースも多い。逃げ道がなく、追い詰められている人が少なくないと思います」
この例は、職場の余裕のなさが女性にのしかかったケースだが、このままだと彼女の後任者もまた不調を訴えかねない。連休明けに不調者や退職者が出た職場で、彼らの分の業務をカバーするためにほかの人にしわ寄せがくる「6月病」危機が起きている例だ。