さらに関税品目リストにはおよそ今のアメリカの消費者が買っているとは思えない、どうでもいい物が目白押し。例えばブラウン管テレビとかトランジスタラジオとか、今時だれが買うというのでしょうか。そういう物にいくら関税をかけても影響はミニマム。もっと言うと、関税対象6千品目といいますが、私が無作為に100項目ぐらい引っ張り出して調べて見ると、実際にアメリカへの輸出価格が値上がりしたという中国製品が見当たりません。となると、実際に関税が価格に転嫁されている部分はかなり限定的と見ることが可能です。

 値上がりしていないのですから、関税の上昇分を負担しているのはアメリカの消費者ではなく、中国企業です。さらにいつも書いているように中国製品はかなりの部分が値段さえ折り合えばほかの国でも生産できるので、脱中国シフトも極めて容易です。つまり現時点ではやはり中国企業のダメージになっているとみるべきで、ある意味トランプ大統領の思惑通りの展開と言えるのです。

AERA 2019年5月27日号

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ぐっちー

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ぐっちーさん/1960年東京生まれ。モルガン・スタンレーなどを経て、投資会社でM&Aなどを手がける。本連載を加筆・再構成した『ぐっちーさんの政府も日銀も知らない経済復活の条件』が発売中

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